U2、米アポロ・シアターでライブを披露 ライブハウス時代を回想

米ニューヨークのアポロ・シアターで開催されたSiriusXM特別公演で初期の楽曲と『ソングス・オブ・エクスペリエンス』収録曲を披露したU2 (Photo by Kevin Mazur/Getty Images for SiriusXM)

米ニューヨークのアポロ・シアターで開催されたSiriusXM公演でU2がライブを披露した。ステージMCでボノは、1980年代に初めてアポロシアターで演奏したことを振り返った。「ポロ・シアターにひざまずいて懇願したおかげで舞台に上がらせてもらったんだ」

米ニューヨークのアポロ・シアターでのSiriusXM公演で、今回のツアーの折り返し地点を少し過ぎたと、コンサートの途中でボノが観客に伝えた。この夜の観客は、U2の熱狂的なファン、幸運なコンテストの勝者、業界関係者、セレブなどで、その中にはスティーヴ・ヴァン・ザント、ジョン・ボン・ジョヴィ、ジョン・マッケンローの姿もあった。そして、ボノが言った。「アポロ・シアターにひざまずいて懇願したおかげで舞台に上がらせてもらった。1980年代だったと思うが、俺たちがこの会場で初めて演奏した曲をこれから演奏する」と。

このとき彼が紹介した曲はビリー・ホリデイにオマージュを捧げた1988年の「Angel of Harlem」。バンドが演奏を始めるとステージ後方の垂れ幕が上がり、サン・ラ・アーケストラのホーン・セクション13人が現れた。彼らの登場は、すでに初っ端から驚き続きのコンサートにさらなる驚きと興奮を与えた。というのも、普段はベルやホイッスルがいるサン・ラ・アーケストラのホーン・セクションだけが、このようなこじんまりした会場で演奏するのはレア中のレアなのだ。サン・ラ・アーケストラはこのあと、陶酔必須の「Desire」、アレンジし直された「When Love Comes to Town」、心揺さぶる「Stuck in a Moment You Can’t Get Out Of」も引き続き演奏し、特に「Stuck in a Moment〜」はアンソニー・ボーデインを含む、最近この世を去った人々に捧げられた。「ここ数年は本当に奇妙だよ」と、ボノが話し始めた。「人々を触発する人たち、とても役に立つ人たちがたくさん去ってしまって、役立たずの連中が増えた」と。

サン・ラ・アーケストラと一緒に演奏した4曲のうち3曲は現在進行中のエクスペリエンス+イノセンス・ツアーでは一度も演奏していない。しかし、この3曲を聞くと、U2がこのSiriusXM公演をファンのための特別な贈り物と捉えていたことがわかる(この公演の模様は今週後半にSiriusXMで放送される予定)。このライブが始まったのはこの4曲が披露される約1時間前で、1980年のデビュー・アルバム『ボーイ』収録の「I Will Follow」で幕を開け、「The Electric Co.」、「Out of Control」と続いた。アダム・クレイトンが事前に約束した「昔ながらのかっこいいシアター公演だ」の言葉通りとなった。しかし、ステージ前のオーケストラ・ピットの座席が取り外されて、そこに汗だくの一般客がすし詰め状態になっている様子を見ると、劇場というよりも、昔ながらのライブハウスでのライブという感じだ……客席をまわって無料のビールとワインを配る係がいることを除けば。(2017年にガンズ・アンド・ローゼスが行ったSiriusXMライブでは、彼らはツアーと寸分違わないセットリストを演奏し、アポロ・シアターが彼らが普段コンサートを行っている会場の1/40の大きさだという事実にすら気付いていなかったことと比べると、これは雲泥の差と言えるだろう。)

観客の興奮度が上昇するオープニングの3曲を連続で演奏したあと、U2は21世紀へと舞い戻り、「Red Flag Day」、「All Because of You」と続き、最近のライブでのスタンダードとなっている「Vertigo」、「Elevation」、「Beautiful Day」を披露した。これらの楽曲は、本質的にスタジアム級の会場の観客を熱狂させるタイプの曲なのだが、アポロ・シアターのような狭い空間でも効果十分だということがここで実証されたと言える。このコンサートで彼らが演奏した唯一の大ヒット曲は「Pride (In the Name of Love)」だった。この曲はマーティン・ルーサー・キングの死後50周年にスポットライトを当てるために演奏され、このときバルコニー席に座っていた歌手であり活動家のハリー・ベラフォンテがステージに招かれた。

「Stuck in a Moment」で公演が終了するような雰囲気が一瞬流れたが、ボノとジ・エッジがシンプルにアレンジされた「Every Breaking Wave」でステージに戻ってきた。アルバム『ソングス・オブ・イノセンス』収録のこの曲をボノが演奏したのは実に1年ぶりで、出だしの歌詞を忘れて、もう一度やり直す失態を犯したが、これもご愛嬌ということでファンは許すだろう。とは言え、この曲が大ヒットした理由を改めて実感する非常に素晴らしい瞬間だった。これは、ストリーミング時代以前から存在するロックバンドでも、大ヒット曲を出せる可能性を実証した曲でもある。U2に関して言えば、結成された当時の米国大統領はジェラルド・フォードだった。

Translated by Miki Nakayama

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