ビヨンセとジェイ・Zのジョイントツアーが開幕、二人が示した真実の愛

前回のジョイントコンサートと比べると、カリスマ性という点ではビヨンセのほうが旦那をはるかにしのいでいたものの、ステージ上ではスポットライトを分け合っていた。それぞれ別々のランウェイが用意され、ビヨンセは軍隊を思わせる大がかりなダンスパフォーマンスを披露(とくに「フォーメーション」と「ラン・ザ・ワールド(ガールズ)」は圧巻!)。一方のジェイ・Zは、盛り上がってきたところで早々と衣装替えし、ビヨンセにステージを譲った(「99プロブレムズ」では防弾チョッキを着用)。その後、「ファ*クウィズミーユーノウアイゴットイット」や「ショウ・ミー・ホワット・ユー・ゴット」のこぶしを突き上げての好戦的なパフォーマンスで、半信半疑の観客を圧倒した。だがやはりクライマックスは、2人が一緒にステージに立った時だ。

「ホーリー・グレイル」で華々しく幕を開けたあと、情熱的な「‘03 ボニー&クライド」、さらに「パート II(オン・ザ・ラン)」では激しいキスまで交わし、完全にヨリを戻したかのようだった。「ノーティ・ガール」から「ビッグ・ピンピン」へ転換は、二人が愛し合うカップル同士だったころを彷彿とさせ、エネルギー全開の「クレイジー・イン・ラブ」は(愛想のない『50シェイズ・オブ・グレイ』のサントラ版ではなく、陽気なオリジナルバージョン)、まるで2度目のハネムーンのよう。カーディフは、心和む福音に満ちたミサへと化した。

たしかに多少ぶざまなシーンもあったが、2時間半のショーは決して観客を飽きさせることはなかった。「レディース、あなたたちは賢いでしょ?強いでしょ? もう十分じゃない?」と叫び、「ミー、マイセルフ&アイ」を歌い始めるビヨンセ。明らかに、自分の夫も含む移り気な男たちの行動を指している。ジェイ・Zの「ザ・ストーリー・オブ・O.J.」も同様に真実を力強く物語っていた。とくにこの時は、エンドレスで観客を盛り上げたコンサートの中で唯一静寂が訪れた瞬間だっただけに、そのインパクトは大きかった。



たしかに、五感がオーバーヒートして、全編アクションだらけのヒット映画を見ているような感覚ではあった。この手のツアーは経験として1度は見ておいたほうがいいかもしれないが。そしてまた、その手の映画同様、最後は必ずハッピーエンディング。家庭のすったもんだは水に流して、フィナーレは夫婦仲良く入場。レッドカーペットのフォトセッションと同じぐらい、貴重な瞬間だ。

どちらも黒の衣装をまとい、ビヨンセは情感たっぷりに、エド・シーランとのデュエット「パーフェクト」を、ゴスペル調の「ヤング・フォエーバー」とクロスして熱唱。今回ビヨンセは、男性側の立場で歌い上げた。

「愛する人と同じステージに立ててうれしいわ」と、ジェイ・Zに向かってほほ笑むビヨンセ。ジェイ・Zもまた微笑み返し、彼の“クイーン”に挨拶すると、またもや巨大スクリーンには「This.Is.Real.Love.(これが真実の愛)」の文字が浮かび上がった。


手を繋いでステージに登場した二人(Raven Varona/Parkwood/PictureGroup)


さて、これは本当に現実か?それともファンタジー? 2人がステージを去った後、スクリーンにはエンドクレジットが流れ、観客はまるでおぜん立てされたハリウッド映画を見終わった後のような気分になった。さっきまでは心の底から楽しんでいて、そんなことには全く気が付きもしなかった。


セットリスト
「ホーリー・グレイル」
「パートII (オン・ザ・ラン)」
「’03 ボニー&クライド」
「ドランク・イン・ラブ」
「Clique」
「イリプレイスブル」

―インタールードー

「ディーヴァ~ダート・オフ・ユア・ショルダー」
「オン・トゥ・ザ・ネクスト・ワン」
「ファ*クウィズミーユーノウアイゴットイット」
「***フローレス」
「フィーリング・マイセルフ」
「トップ・オフ」
「ノーティ・ガール」
「ビッグ・ピンピン」
「ラン・ディス・タウン」
「ベイビー・ボーイ」
「ユー・ドント・ラブ・ミー」
「バム」
「ホールドアップ~カウントダウン」
「ソーリー~ミー、マイセルフ&アイ」
「99プロブレムズ」
「リング・ザ・アラーム」
「ドント・ハート・ユアセルフ」
「アイ・ケア」
「4:44」
「ノー・チャーチ・イン・ザ・ウインド」
「ソング・クライ~メニーフェイスドゴッド」
「リゼントメント」
「ファミリー・フュード」
「アップグレイド・ユー」
「ニガ・イン・パリス」
「ビーチ・イズ・ベター」
「フォーメーション」
「ラン・ザ・ワールド(ガールズ)」
「パブリック・サービス・アナウンスメント」
「ストーリー・オブ・O.J.」
「デジャ・ヴ」
「ショウ・ミー・ホワット・ユー・ゲット」
「クレイジー・イン・ラブ」
「フリーダム」
「ユー・ドント・ノー」
「パーフェクト・デュエット」
「ヤング・フォエーバー」

Translated by Akiko Kato

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