BTSが世界で成功を収めた理由:K-popのルールや価値観を覆したBTSの軌跡

Jae-Ha Kim | 2018/05/31 08:00

| 先日、全米チャート1位を獲得したK-popグループのBTS |


BTSと彼らのファンにとって、寛大さを示す言動が政治的なメッセージになってしまうことが多々ある。2014年4月に韓国の海岸でフェリー船セオル号が沈没して約300人の学生が死亡した事故のあと、韓国の政治家たちはこの悲劇的な事件と自分は関係ないというスタンスを取ろうとした。当時の朴槿恵大統領の支持者である保守派が「この悲惨な出来事を忘れるべきときがきた」と発言して、犠牲者を軽視するような態度を見せたとき、悲しみにくれる親たちはハンガーストライキに参加したのである。この数年後、政府主導で作られた芸能人のブラックリストが暴かれたのだが、これには朴槿恵政権に批判的な言動の芸能人がリストアップされていた。当時のBTSはこのようなリストの存在など知らなかったようで、犠牲者の遺族たちに10万ドル(約1千万円)を寄付することで自分たちの立場を表明したのであった。

数年前にBTSのメンバーSugaがファンに、金持ちになったらファン全員に牛肉を買ってあげると言ったことがあった。輸入税の高い韓国でこれは高価な贈り物と言える。そして2018年、Sugaは自分の誕生日にその約束を果たした。牛肉を贈呈するファンを選ぶのではなく、ARMYの代理として1万9千ドル(約200万円)分の牛肉を孤児たちに寄付したのである。彼のこの行為に満足したファンはSugaと同じように自分たちも寄付を行った。

また、BTSが反暴力の「Love Yourself」キャンペーンでユニセフ(国連児童基金)とパートナーシップを結んだとき、彼らのファンはどんな助けが出来るのかをグループに確認したと言う。そしてこの5月、ユニセフUSAが行った栄養失調の子どもたちに食べ物を送るキャンペーンにBTSファンであるARMYが参加し、寄付金額100万ドル(約1億1千万円)を2日間弱で達成した。

10代の少年から大人へと成長したメンバーたちが書く歌詞は以前よりも深く、重いものになっている。そして、彼ら自身が気づき、懸念する問題について正直に語る姿勢にも真剣さが増してきた。彼らは成功によって手にした自分たちのプラットフォームの大きさとその意味をしっかりと認識しているのだ。

韓国の保健福祉部の報告書によると、韓国国内の一日の自殺者数は36人だ。この問題に対する韓国政府の対応は非常に遅いが、BTSメンバーの何人かは鬱を患っていたことを公表している。彼らのドキュメンタリーシリーズ「Burn the Stage」内で、あるファンが「朝に目覚める唯一の理由がBTSのときがある」と言った。同じエピソードでRMは鬱によってステージ恐怖症になったことを語ったのである。「前に楽しかったことを楽しめないようになった」と。また、ファンに向けた新年のあいさつでSugaが「夢を持たないで生きてもいいんだよ」というメッセージを送ったこともある。

BTSは自分の同胞が教育の面で耐え難いほどのプレッシャーを受けていること、それが彼らのメンタルヘルスに大きな悪影響を及ぼしていることを実体験として知っているのだ。彼らは曲を通して、プレッシャーや悪影響に負けないで、とにかく生きろとメッセージを送っている。「好きなように生きるんだ、だってこれは君の人生なのだから」という歌詞がアンセム的な曲「Fire」に入っている。これと同じ生き残るというテーマが新曲「Paradise」にも続いていて、リスナーに控えめな目標でも構わないと語りかけている。「僕たちは生きるに値する」と。

現在の韓国の指導者も彼らの言葉に耳を傾けることだろう。BTSがビルボード200で歴史的な1位を取ったあと、文在寅大統領が「BTSは悲しみを希望に、違いを類似に変える魔法の力を持っている」と述べた。

Translated by Miki Nakayama

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