英ロイヤル・ウェディング音源収録秘話:プロデューサーが語る感動挙式舞台裏

ハリー王子とメーガン・マークルさん(Photo by George Pimentel/WireImage)

先週末、世界中の目がハリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式に向けられていた最中、プロデューサーのアンナ・バリーは崇高な任務を与えられていた。ロイヤル・ウェディングで使用された音楽をひとつ残らず録音し、最速でストリーミングにのせること。レコード会社によれば、かかった時間は9時間弱だったそうだ。その舞台裏をローリングストーン誌に語った。

この道30年のベテランプロデューサーである彼女は、デッカ・レコーズと協力して、すべてが円滑に進むよう、いざというときのバックアッププランをいくつも用意しておいた。世界的ビッグイベントを収録し、最高品質で届けることが彼女の任務。デジタル音源は聖ジョージ礼拝堂からケンジントン・スタジオへ送信され、すぐさまマスタリングが行われた。そうして完成した作品は現在ストリーミング配信されている。また、近々CDとレコード盤でも販売される予定だ。

アンナ・バリーは、7年前に行われたウィリアム王子・キャサリン妃の結婚式の収録でも陣頭指揮を執った人物。これまでにジュリアン・ロイド・ウェッバーやアンドレア・ボチェッリ、いまは亡きディミトリー・ホロストフスキーなど、600近い作品のレコーディングに携わってきた。ローリングストーン誌は彼女とコンタクトし、現代史の記録がどれほど最速で作られたのかを聞いてみた。

ー今回のプロジェクトにはどのぐらい前から取りかかったのですか?

数か月から。守秘義務があったのよ。デッカが私に依頼してきた時、絶対に他言無用だと念を押されたわ。結婚式の収録では、やれることは限られている。だから作業の大半が最後の数週間にかかってきた。ものすごく忙しかったわ。

ーロイヤル・ウェディング前の数週間は、寝る暇もなかったのでは?

ちょっと眠ったかと思ったら、「もし何かあったら・・・?」と、ふと目を覚ましてしまうの。たくさんの組織が絡んでくると・・・情報を出し惜しみするとか、意地悪をしているわけではなくて、とにかく大勢の人が関割っているでしょう。みんなの手を煩わせるわけにはいかないのよ。ウィンザー城にたどり着けず、「おい、彼らはいったいどこにいるんだ?」って大騒ぎする夢を見て、夜中に目を覚ましたこともあったわ。細かいことが気になって眠れない夜もあった。些細なことまで綿密にプランを立てた。A案やB案だけでなく、C案やD案まで用意していたわ。

ーご家族や友人に秘密にしているのはどんな気分でしたか?

私がこれまで内緒にしてきた中で、最大の秘密ってことになるわね。「私、こんなすごいことに関わってるのよ!」って自慢したくてたまらなかったわ。最終的に打ち明けた時には、みんなすごく羨ましがっていた。3歳の姪っ子も私宛に、「ドレスは紫色がいいと思う」とメッセージを送ってきたわ。

ーこれほどの規模の収録は、どんな風に進められるのでしょう?

最初に、結婚式と音楽両方の当事者、つまり新郎新婦が選曲する。2人と直接会話をする機会はなかったけれど、だいたいどんな風になるのかということは聞かされていた。もちろん超極秘情報としてね。それからずいぶん長いこと、その情報をもとに話し合った。大きな影響力をもつ行事を構成する音楽を選ぶのは、アーティスティックな作業だけれど、その作業には私たちは無縁だった。私たちは、幸運にも楽曲リストを与えられただけ。見事にバランスが取れていたわね、新しいものと伝統の融合、かといって一般人が選ぶようなありきたりのものでもなく、伝統的なイギリス式ウェディングの領域に、ちょっと面白い味付けを加えていた。結婚証明書への署名でのシャク(チェリストのシャク・カネー=メイソンのこと)の演奏とか、ゴスペル演奏とかね。やってくれるじゃない? ね?

ー収録音源の編集にまつわるエピソードを教えてください。

馬車によるパレードが終わるまでは、ウィンザー城から出られないことは知っていたの。ポスト・プロダクションとアップロードのために、敷地内のとある場所に行かなくちゃならなかったんだけど、たかが馬車でしょ、とタカをくくっていたの――マーチングバンドや鼓笛隊じゃないんだから、って。ところが、楽観的に車から降りたら――もちろん、全部バックアップを取った後でね――機材をもったまま、ずーっと待ちぼうけ! 来賓客はパーティ会場でわいわい食事したり楽しんでいるというのに、私たちは晴天の下で立ち往生。唯一出入りを許された入口が、マーチングバンドに完全にふさがれてしまって15分も待つ羽目になったの。マーチングバンドの後ろで待ちながら、アップロードの締め切りが気になって仕方なかった。やっと通れるようになって、一番乗りで中に入っていったわ。プレッシャーを感じ始めたのはそのあたりからね。

Translated by Akiko Kato

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