バンドからソロへ、環境を変化させたニックの「変わらない」部分 日本語の勉強については教本アプリを使っているそうで、「まだ赤ちゃんレベルだけど、いつか喋れるようになると思う」と前向き。お気に入りスポットは新宿御苑で、「静かで美しくて、しかも入園料はたった100円だから、5時間くらい過ごしちゃったよ」と、ニックは笑いながら振り返る。
「その一方で東京には、原宿みたいな雑然とした場所もある。あまりにも多くのものが集まっていて、全てを見ることなんか不可能だよね。なにしろレスターは、隅から隅まで知り尽くしているから。それはそれですごく居心地がいい。でもたまに、頭にガツンと一撃食らわせるような、大胆な変化を求めたりもするんだよね。僕は曲をひとつ仕上げると、町を歩きながらそれを聴くのが好きなんだよ。そういう意味で日本にいると、あまりにも町そのものが新鮮だから、どの方角を向いて歩き始めても、必ず初めて目にするものに出くわす。近所のセブン‐イレブンに行くだけでも、途中で面白い刺激を受けて、いい気分になることだってあるよ(笑)」
こうして日本への想いを熱弁する一方で、トレンドに流されず、自分らしい道を歩もうという独立独歩のスタンスは、生まれ故郷のレスターで育まれたものだという。そう考えると『CIRCUS LOVE』は、バンドからソロへ、UKから日本へと環境を変化させたニックの、変わらない部分を確かめるためのアルバムとも位置付けられるのかもしれない。
「バンドを結成してマネージャーだのレーベルだのと仕事をし始めた時も、そういうことはすごく遠い世界のように感じられた。ロンドンを拠点に活動しているバンドとは感覚が違って、例えば毎晩いろんなイベントに顔を出したり、しょっちゅうミーティングに行ったりといった生活とは無縁だったんだよね。だから常に自分たちがやりたいことをやっていた。だって僕の故郷はレスターの小さな村で、バンドやミュージシャンなんかほかにいなかった。家族にしても、音楽活動を応援してくれはしたけど、エンターテイメントの世界のことは一切知らない人たちだった。興味は持ってくれても、セールスの話とかはしないし(笑)。そういう静穏な環境を維持するのも、なかなかいいことだよ。子どもの頃から同じ友達と付き合っているし、僕自身も変わっていないんだろうね」
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