アークティック・モンキーズ最新インタビュー:未だ謎多きニューアルバムの全容

アレックスが組み立てたジャケ写の模型が、世界観を雄弁に物語っている

しかし、試行錯誤を繰り返すうちに、ターナーとクックはピアノとギターを同居させる方法を見出していった。ヘルダースとベーシストのニック・オマリーは、2人から遅れてセッションに参加している。ハリウッドの老舗スタジオElectro-Vox、そして風化した外壁が美しいパリ郊外のマンションLa Fretteで行われたそのセッションから、ヘルダースは多くを学んだという。「過去の作品でもそうだったけど、俺の目標は誰も聞いたことがない、真にオリジナルなドラムビートを生み出すことだ」彼はそう話す。「でも今作ではそういう自己主張を抑えた。楽曲を引き立たせるためのドラムを心がけたんだ」

大胆な方向転換を図った今作が、ビッグなリフばかりを求めるファンに対する「ファック・ユー」のジェスチャーなのかと尋ねると、ターナーは不敵な笑みを浮かべてこう語った。「イエスでありノーでもあるってところかな。ギターリフとファック・ユーのどちらもあるってことさ」

それでもターナーは、ファンの反応をまるで気にかけていないわけではないと念を押す。アルバムを完成させた後、彼が自ら組み立てたというジャケ写の模型は、彼が追求した不思議な世界観を何よりも雄弁に物語っている。6枚目のアルバムにちなんだ六角形のスケッチから生まれたその模型は、エーロ・サーリネンやジョン・ロートナーといった20世紀中期を代表する建築家たちにインスパイアされたものだという。2カ月ほど画材屋に足しげく通ったというターナーは、画用紙を大量に購入し、X-ACTOナイフでさまざまな形にカットしていった。「夢中になったよ。真夜中に起き出してきて、作業に没頭することもあった。俺はロビー・モデルって呼んでたんだ。ある建物のロビーに、その建築物の模型が置いてあったりするだろ? そのループ感にすごく惹かれるんだ。映画『シャイニング』で、ロビーに置いてある迷路の模型をじっと見ている男の目に、そこに迷い込んだ人間の姿が映る……ああいう感覚さ」

『シャイニング』というキーワードからは、ある疑問が連想される。ターナーの周囲の人々は、取り憑かれたかのように作業に没頭する彼の精神状態を懸念しなかったのだろうか? 彼のガールフレンドでありモデルのテイラー・バグリー、そして愛犬のスクートは、夜な夜な創作活動に励む彼を支えてくれたという。「作業するときは、いつもスクートが付いてきてくれた」。そう話すターナーは、笑ってこう付け加えた。「狂者を見るような目つきではなかったよ」




<リリース情報>

『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』

アークティック・モンキーズ
『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』
レーベル : Domino / Hostess
発売日: 2018年5月11日 世界同時発売
※歌詞対訳、ライナーノーツ(妹沢奈美 / 田中宗一郎)付

収録曲:
1. Star Treatment
2. One Point Perspective
3. American Sports
4. Tranquility Base Hotel & Casino
5. Golden Trunks
6. Four Out Of Five
7. The World’s First Ever Monster
Truck Front Flip
8. Science Fiction
9. She Looks Like Fun
10. Batphone
11. The Ultracheese


<ポップアップ・ストア開催情報>

アークティック・モンキーズ ポップアップ・ストア

期間:2018年5月11日(金)〜13日(日)
営業時間:10:00〜23:00
場所:hotel koé tokyo(東京都渋谷区宇田川町3-7)
http://hotelkoe.com/location/

Translated by Masaaki Yoshida

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