ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・ムービー」

8位 『デトロイト』

キャスリン・ビグロー監督と脚本家マーク・ボールが1976年のデトロイトで実際に起きた異人種間の暴動を描いた、見る者の感情を刺激する作品だ。異人種間の暴動は、警察官の過剰暴力や組織的人種差別として、今日も存在する社会の毒である。そういう問題と距離を起きたい人たちもいるだろうが、それは大きな間違いだ。『デトロイト』は鑑賞にそれ相当の体力と気力を要する作品だが、一度観たら永遠に忘れられない作品でもある。

日本公開:一部地域のみで公開中。7月4日(水)よりBlu-ray&DVD発売決定、レンタル同時スタート。

7位 『シェイプ・オブ・ウォーター』

視覚の魔術師ギルレモ・デル・トロ監督が、米ソ冷戦下を舞台に、口のきけない少女(サリー・ホーキンス)と政府に捕らえられた半魚人(ダグ・ジョーンズ)の切ない情熱を掘り下げているのがこの作品だ。監督の飽くなき追求は、結果として、私たちが“エイリアン(よそ者)”と決めつけるものが何かについて雄弁に語っている。
本作は、第90回アカデミー賞 最多4部門、ゴールデングローブ賞2部門を受賞。

日本公開:全国にて上映中

6位 『レディ・バード』

大人への階段をあがる青年期のコメディ作品として真新しいものは何もないが、『レディ・バード』はこのジャンルの王道ストーリーをスリリングに描いた作品で、これはグレタ・ガーウィグ監督の脚本力がなせる技だろう。この作品はガーウィグ初の単独監督作品で、2002年前後のサクラメントで過ごした自身の成長期を基にした半自伝的作品でもある。シアーシャ・ローナンとローリー・メトカーフが演じる母子が繰り広げる親子げんかで、二人がぶつけ合うセリフはどの世代の人間であっても痛いところを突かれること間違いなしだ。

日本公開:6/1より公開

5位 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

スティーヴン・スピルバーグ監督の刺激的な政治スリラー作品。ニクソン政権下のホワイトハウスがワシントン・ポスト紙の発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集長ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)に仕掛けた脅しは、現在の状況に通じると誰もが思うだろう。時は1971年。問題はペンタゴン・ペーパーを掲載して政府の巨大な不正を暴くべきか否か。現在のトランプvs言論出版の自由の図式はすべて意図的なものだ。あからさまな性差別をする男の群れの中で声高に叫ぶ女性を演じたストリープは、4つめのオスカーは逃したものの、この作品でもアカデミー主演女優賞にノミネートされた。スピルバーグ監督の“スピード感が命”という演出が、作品の中で描かれている実話と、現実の過去、現在、そして背筋が凍る未来をつなぎ合わせている。

日本公開:上映中

Translated by Miki Nakayama

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