来日目前のデュア・リパにNYで密着取材「自分がやるべきことの意味」

Jonah Weiner | 2018/05/06 10:00

| デュア・リパ(Photo by Bryan Derballa for Rolling Stone) |


SNLのリハーサル現場に話を戻そう。今、リパは「ホームシック」が上手くいくのか不安げだ。両脚を組んで、背筋を伸ばし、左手でコードレスマイクを持ち、右手をピアノの上にぎこちなく置いている。このポーズになったのは、それが一番自然に映るからではない。ヴォーカル・コーチのローナが、このポーズだと曲の始めにある音域ギリギリの高音を十分に出せると助言したからだ。パフォーマンスが終わった途端、リパが顔をしかめる。ある高音が一つ出ないことに気付いたのだ。

即座にリパはスタッフと会議に入る。ジュールズが撮影した動画を見せると、ローナがヴォーカル・トレーニングを始める。リパはスマートフォンの動画を細かくチェックすると、奇妙な声を出してローナに聞かせる。程なくSNLのカメラクルーが位置につき、次のリハーサルの準備を行う。今回のパフォーマンスでは、2つ目のバースが始まると両手でマイクを掴み、胸の前でマイクを持った。その後で、左手を頬に近づけると、チャンスを逃すまいと瞬時にカメラが寄り、静かなパフォーマンスにドラマチックな変化が生まれた。これは本当に些細な変化だが、ジュールズの動画を見たリパは、これが大きな違いを生むと確信した(本放送を観てほしい。彼女はリハーサルの動きをそのまま繰り返す予定だ)。

40人近いクルーとスタッフがその様子を見て、心を奪われている。彼女のパフォーマンスが終わったとき、スタジオ内に拍手が沸き起こった。簡単そうに見えて、実はかなりの努力を要するパフォーマンスが上手く行ったのである。

デュア・リパがこれほど小さい空間で歌を歌ったのは久しぶりだった。ブルーノ・マーズのオープニング・アクトとしてアリーナ・コンサートを続けていた彼女は、2017年秋にマディソン・スクエア・ガーデンで2晩パフォーマンスした。大きなビート、大きなフック、それをも上回る大きさのヴォーカル――現在のリパのサウンドは大きな会場に適している。しかし、15歳のとき、友人の寝室でカバー曲を歌い、その動画をYouTubeにアップし始めたのがデュア・リパの出発点である。当時の彼女は、大好きなクリスティーナ・アギレラやジョス・ストーンの声量を求められる楽曲ですら、怯むことなく歌っていた。彼女たちの楽曲を選んだのは戦略の一部だった。「あの動画はフォトグラファーにとってのポートフォリオのようなもので、出掛けては友達を作っていたの。誰かが『僕はプロデューサーの……』とか『私はソングライターの……』みたいに自己紹介すると、『実はこんなカバーをやっているの』と動画を教えていたわけ」

実際に会って友達になったり、オンライン上で知り合った人脈が、彼女をベン・モーソンへと導いた。彼はラナ・デル・レイなどがクライアントの音楽マネージャーである。モーソンはリパと契約を結び、文字通り契約の翌日にスタジオをブッキングして、リパの音楽制作が始まった。この制作には多彩なソングライターが参加しており、まるでライターのパレード状態だった。その頃の彼女は自身の音楽に対して大雑把なイメージがあったと言う。それはポップスとヒップホップの両方を同じくらい愛している自身の音楽の好みを反映したものだった。しかし、この組み合わせの奇妙さはソングライターたちを動揺させた。「スタジオに入って『ネリー・ファータドとJ.コールみたいなサウンドがいい』と言ったら、みんな『何だって!?』って」

彼女のインスピレーションの出処は普通ではなかった。ロンドン拠点のエレクトロニック・アクトのRITUALと共に曲作りをする一方で、未完の楽曲を完成しようと悩んでいたリパ。「当時、かなりキツい別れを経験していたの。私に自分はダメだと思い込ませる人だった。でもこの曲を作りながら、彼の方が私を理解できないって内容にしたかったの」。その曲は「良い仕上がりだったけど、コーラスが完成していなかった。だから『これはゴミ箱行きね』ってみんなが思っていたわ。そんなとき、Tumblrをスクロールしていたら、黒の背景に赤文字で『Hotter than Hell』と書いていたのを見つけたの。『これ、クールじゃない!』って思って。もし彼が私を地獄よりも熱いと思っていて、私は彼を欲しくないとなったらどうかな?って思ったわけ」。そうして完成したシングル曲「ホッター・ザン・ヘル」は、イギリスでゴールド・ディスクを得ることになる。 リパ曰く、この曲が完成したおかげで、自分の個性に合うと実感できる楽曲をやっと見つけられたという。そして、この曲が愛の戦士というイメージを彼女に重ね、その姿がファンに受け入れられることになる。彼女の歌詞には儚さと憧憬が散在するが、最優先する空気感は、たわ言は信じない、断固として立ち向かう、というものだ。「ニュー・ルールズ」は、諦めきれない男を完全に断つために作った3つのルールを歌っている。最も新しいシングル曲「IDGAF」は「ニュー・ルールズ」の続編という趣で、元カレが木工細工から這い出して、元サヤに収まろうとするが、リパは情け容赦なく元カレを追い出す。

これら3曲は丸々リパの体験を歌ったものではないが、リパは彼氏にだまされた経験ならたくさんあるという。彼女の元カレたちは「感情を操る」ことがあったらしい。また彼らの欠点や失敗がコミカルなこともあったという。「絶対に野菜を食べない男とデートしたことがある」とリパ。「そのとき、『これはサイテーだわ。あなたって5歳児みたいな食べ方じゃない。マジで勘弁』ってなった」

Translated by Miki Nakayama

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