写真家・鋤田正義が明かすボウイ、清志郎との撮影秘話

Joe Yokomizo | 2018/04/28 11:15

| 写真左からイギー・ポップ、鋤田正義、デヴィッド・ボウイ 映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』より (c)2018「SUKITA」Partners |


―写真から教わるというのが素敵ですね。他にも写真から教わった経験はありますか?

最近だと小山田圭吾くんの撮影ですね。しょっちゅう顔は合わせていたんですけど、ある時、向こうから声を掛けてもらってセッションをやったんです。僕はいつものように自分が推薦する表情の良さそうな写真を何枚か送って、『どれを使うのかなぁ』と楽しみにしていたんです。小山田くんって表に出るタイプじゃないし、レコードジャケットを見ると、顔をハッキリ写さないパターンの写真が多いので、そういうのも考えて選んで送りました。結果、彼が選んだ写真は影だけの写真でしたね。それが彼の本質を現していて嬉しかったです。写真の選択がすごく彼らしくて、僕が成長しないとダメだなと思いましたね。

―素敵な話ですね。

撮影って、普通は被写体の心を開かせるものなんだろうけど、逆に写真家の心を開かせてくれるというかね。ああ、こういう人もいるんだなと思いましたね。それも含めて写真なんですよね。ある意味ではあの写真がポートレートの極地かもしれませんね。


(C)All the photos by SUKITA. All rights reserved

―人を撮ることに正解はないんですね。


そうだと思います。僕がいくら年をとっても“巨匠”と呼ばれたくないのはそこにあるんです。年齢がいくと単純にみんなから巨匠扱いされるけど、僕はいつも1年生のつもりです。

―映画の中でも描かれていましたが、清志郎さんをメンフィスで撮った写真も素敵ですね。

たぶん、このメンフィスでの撮影が最初の清志郎の撮影だったと思うんです。あの頃は坂本龍一と「い・け・な・いルージュマジック」をやっていた時期で、坂本龍一はYMOですでに撮っていたんですけど、清志郎は撮ったことがなかったんです。でも、曲も含めて面白かったから気にはしていて。そうしたら向こうから撮影の依頼の電話かかってきて「メンフィスに行くんだけど、メイクもしないし、スタイリストもなしでとにかくすっぴんの彼を追ってくれませんか?」みたいな話だったの。すぐにOKの返事をしましたね。

―撮影したのは92年だと思います。RCサクセションの活動が止まっていたタイミングで、メイクもしない、スタイリストもいない、しかもMG’Sと共演するなど自身のルーツ音楽に接していた素顔の清志郎さんはどんな感じでした?

そもそもMG’Sをバックにしているのはすごいなって思って、こっちもやる気になったとういうか、清志郎に対しての敬意は撮影前から抱いていましたね。アルバムのジャケットに使われた写真は綿花畑をバックに撮影したんです。メンフィスと言えば黒人奴隷が綿花畑で労働させられていたところから歴史が始まっているので、レコードジャケット撮るならそういう黒人奴隷の歴史も含めて入っている方がいいなと思ったので。でも、撮影に行った時はちょうど綿花が収穫されたばかりの時期で、ほとんど綿花が残ってなかったんですよ。それで一番咲いているところを探して撮ったんです(苦笑)。


(C)All the photos by SUKITA. All rights reserved

―そうだったんですね。

その後、メンフィスを皮切りにニューオリンズやシカゴへ行き、最後はニューヨークへ行きました。ブルースの巡礼みたいに。その時、清志郎は子どもが生まれたばかりだったんですよ。それでどこの劇場かは忘れましたけど、劇場の看板にお金を出して、子どもの名前を入れてもらったんです。劇場には、その日コンサートをやるバンドの名前や日付を貼っているネオンサインの看板がありますよね。その看板に子供の名前を入れたんです。感動しましたよ。

―本当だ。『TAPPEI KUN LOVE FROM MEMPHIS』と看板に書いてありますね。

たぶん、誰も気づいてないと思いますけど、清志郎が撮影のときに教えてくれたんです。僕はこの写真が好きでね。彼の気持ちがすごく入っているので。僕がメンフィスに着いて、ここから撮っていいよってなったときに、彼らしいのが裸になるんですよ。どういうことかと言うと、一カ月以上レコーディングで泊まっている部屋に自由に入らせるんです。普通、ミュージシャンやタレントさんは部屋まではカメラを入れさせないです。で、部屋に入ってみたら、壁にベタベタとたっぺい君からの一カ月間のラブレターがいっぱい貼ってあるの。ラブレターと言っても母親から書かされたものですけど。あとは醤油のラベルが貼ってあったりして、日本恋しさが壁を見るだけでわかる。それを撮るなとは言わないの。そういうきっぷの良さをみて、清志郎は人間を本気でやっているなって感じたんです。ステージ上も彼の本領を感じるけど、そういう何気ないところに人間性が出るじゃないですか。子どもへの愛情の表現がこの看板の文字ですよ。会いたくてしょうがなかったんでしょうね。

―素敵な写真だし、素敵なお話ですね。最後に伺いたいのですが、鋤田さんが写真を撮る時に一番大事にしていることは何ですか?

自分で言うのは難しいですね。人から見たらわかる部分かもしれないですけど。なので、今回のドキュメンタリー映画や僕の写真を観てもらってそれぞれが感じて貰えればいいのかなと思っています。





『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』

デヴィッド・ボウイをはじめとする世界中のアーティストを撮影してきた写真家・鋤田正義を追った初のドキュメンタリー
5月19日(土)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
http://sukita-movie.com/


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