ポルノ業界のイノベーター:AVをアートへと昇華させた男

Jennifer Swann | 2018/05/01 22:00

| ポルノ業界で帝国を築き上げた男、グレッグ・ランスキー(Photo by Brian Guido for RollingStone.com) |

コンテンツの無断転用とチューブサイトに乗っ取られたポルノ業界において、「人々は優れたものには金を払う」という信念をもって帝国を築き上げた男、グレッグ・ランスキー。彼の野望は、ポルノというカルチャーのイメージを刷新すること、そしてユーザーを驚かせるほどディティールに拘った、圧倒的なクオリティのコンテンツを提供することだとローリングストーン誌に語ってくれた。

2月のある木曜日の午後、カリフォルニア州スタジオシティに拠点を置く、グレッグ・ランスキーが経営するアダルト向けエンターテインメント企業のオフィス内には、まるでクリスマスの朝のような祝祭ムードが漂っている。広々としたスペースに映像編集用の設備とフラットスクリーンが設置された、IT系のスタートアップを思わせるオープンプランのオフィスの中央には、彼が運営するブランドの中でも最も新しく有名なVixenの代名詞となった、金のソファが堂々と置かれている。その前にあるガラス製のテーブルの中には高級感漂う贈答品用袋が詰められており、背後の棚には金色に輝くAVNアウォード(※米国アダルト専門誌AVNが毎年開催されている賞:通称ポルノのオスカー)のトロフィーが所狭しと並んでいる。ローズカラーのアビエーター、ブラックのタートルネック、ボタンを外したシルクのヴェルサーチのシャツ、そしてブラックのジーンズという服装のランスキーは、我々を前にいたずらっぽい笑みを浮かべながら、羽振りのいいサンタクロースを演じている。

「最初の贈り物だ!」そう声を上げた彼は、ポルノスターのアベラ・デンジャーにティファニーのギフトバッグ、そしてクリスチャン・ルブタンのパンプスの箱を持たせた。Instagram Liveで毎月配信しているこの大人気イベントで、ランスキーは注目すべきポルノスターを新たなVixenエンジェルに指名し、その女性に様々なプレゼントを贈る。事実上のブランドアンバサダーとして、これまでにトーリ・ブラック、アナ・フォックス、そして昨年12月に自ら命を絶ったオーガスト・エイムス(事件に心を痛めたランスキーは、残された彼女の夫と共に、彼女の名前を冠した自殺抑止プロジェクトを立ち上げた)等がVixenエンジェルを務めている。ハイファッションの広告かと思うほどゴージャスな写真で知られるエンジェルは、Vixenを単なるポルノ企業ではなく、独自のライフスタイルを提唱する一流ブランドとして大衆にアピールするという役割を担っている。

「金塊、ライフスタイル、高級車、ヴェルサーチ、高級腕時計、人はそういうものに引き寄せられる」現在35歳のランスキーは、フランス訛りの英語でそう話す。「ゴージャスな写真やビデオの数々、そして僕が仕事を共にしてきたアーティストたちが、そのことを裏付けてる」

彼が言うアーティストとはポルノスターのことだが、ランスキーにとって彼女たちはそれ以上の存在だ。彼の撮影では、スポーツカーやヘリコプター等をバックに、銃を手にしたVixenエンジェルたちがアクションヒーローや映画スターはもちろん、時にはアスリートに扮してみせる。それらの写真をコーヒーテーブルブックにコンパイルしている彼は、いつかアートギャラリーで写真を展示したいと考えているという。ランスキー曰く、そういったゴージャスな写真の撮影には3万ドル以上かかる場合もあるという。しかし実際には、「最高峰の異人種間セックス動画ライブラリー」をうたうBlacked、「アナルセックスというアート」というキャッチコピーを掲げるTushyといった、Vixen以外に彼が運営するサイトの売り上げは、そういった撮影のコストには遠く及ばないことがほとんどだという。月額29.95ドルの会員費を支払えば、控えめなカラーリングや自然光、コントラストのはっきりとしたセットといった様式で統一された同ブランドのポルノムービーを、ユーザーは無制限で視聴できる。しかし彼がVixenエンジェルの撮影に多額の投資をする理由は、より長期的かつ定義が困難な目的を達成するためだという。ランスキーの野望、それはポルノというカルチャーのイメージを刷新することだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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