「コーチェラ2018」フォトライブレポ:ビヨンセ、ミーゴス、X JAPANまで

ジャミロクワイ

Koury Angelo for Rolling Stone

2005年以来初めてとなるアメリカでのライブで、ファンキーなポップを鳴らすイギリスのジャミロクワイは、ザ・ウィークエンドのメランコリーなセットにうっとりしていたオーディエンスの目を覚ますかのような、圧倒的なパフォーマンスで金曜の夜を盛り上げた。カラフルに輝くLEDライトのヘッドピースを身につけたフロントマンのジェイ・ケイは、オーディエンスをこれでもかというほどに煽り、モハーヴェ・テントを巨大な屋外ディスコへと変貌させた。2017年作『オートマトン』からの曲『ドクター・バズ』をプレイする際には、マイクを手にしたスヌープ・ドッグがステージに登場した。バンドによるスヌープのヒット曲『ドロップ・イット・ライク・イッツ・ホット』や『ジン&ジュース』のカバーは、エネルギーを持て余していたオーディエンスを狂喜乱舞させた。

キング・クルール

Rich Fury

ロンドン出身のキング・クルールは、煙たいジャズ、ひねりの効いたファンク、ノイジーなロック、じっとりとしたパンク等、様々なスタイルを時には1曲の中に封じ込めてみせながら、コーチェラのオーディエンスを魅了した。その特徴的な声でマイクに向かってがなったかと思えば、次の瞬間にはステージにその華奢な体を打ちつけたりと、その予測不可能ぶりは大物だけが持つ雰囲気を放っていた。

セイント・ヴィンセント

Koury Angelo for Rolling Stone

ベージュのビニールスーツと真紅のオペラグローブをまとったアニー・クラークは、サイボーグを思わせる冷淡さでギターを激しくかき鳴らした。フル編成の生バンドのお披露となった金曜のステージで、彼女は最新作『マスセダクション』の緻密なプロダクションを見事に再現してみせた。クラークとミステリアスなメンバーたちが見せた、冷たくも魅惑的な一大スペクタクルは、ロックのショーというよりもパフォマンスアートを思わせた。

ヴィンス・ステイプルズ

Koury Angelo for Rolling Stone

金曜の夕方に登場したヴィンス・ステイプルズは、ステージ上でその鋭いフロウ以上の毒を吐いた。「このステージのアクトは白人ばっかだよな。そんな中に俺を紛れ込ませてくれたことに感謝するよ」そう言い放った彼だが、直後にシザとザ・ウィークエンドが控えていることを把握していなかったのだろう。ロングビーチ出身の彼が居心地の悪さを感じていたかどうかは不明だが、少なくともステージ上での彼は徹底してプロだった。巨大なコラージュのスクリーン(カート・コバーンのインタビュー動画、『ブラックパンサー』のデモンストレーション、そして話題となった彼自身のスプライトのCM等を映し出していた)をバックに、ステイプルズは『サマータイム ’06』と昨年の『ビッグ・フィッシュ・セオリー』からの代表曲をプレイした。やや大人しいオーディエンスを最も興奮させたのが、『イェー・ライト』でのケンドリック・ラマーの登場だったことは事実だが、その見事なステージングは彼が一流のMCであることを証明していた。

ブロックハンプトン

Koury Angelo for Rolling Stone

土曜の夜のモハーヴェ・テントを埋め尽くしたオーディエンスは、ショーの開始前からブロックハンプトンの名前を連呼していた。開始時間の遅れとマイクの不具合(これに対して主要メンバーのケヴィン・アブストラクトは、後に真摯な謝罪コメントを発表している)に見舞われながらも、ロサンゼルスを拠点とするヒップホップ集団によるパフォーマンスは、紛れもなく先週末のハイライトのひとつだった。防弾チョッキを身にまとい、ストリングセクションを従え、さらにはDJ A-トラックをゲストとして迎えた彼らは、3部作『サチュレイション』のハイライトを、いなたいボーイバンド風の振り付けとともに披露してみせた。そのパフォーマンスからは、初期のビースティー・ボーイズを思わせるエネルギー、最盛期のウータン・クランが誇ったダイナミックなインタープレイ、そしてオッド・フューチャーのクリエイティブな悪戯心が等しく見てとれた。その圧倒的なエネルギーの虜となったファンたちの興奮ぶりは、ブロックハンプトンの勢いが一時的なものではなく、今やムーヴメントとなりつつあることを物語っていた。

ブリーチャーズ

Koury Angelo for Rolling Stone

「俺たちはブリーチャーズ、ニュージャージーからやって来た!」フロントマンのジャック・アントノフはそう声を上げた。ノースリーブのTシャツと黒のキャップ姿で金曜のステージに登場した彼は、ポップアクトのfun.の時とは違い、どこにでもいる身近な若者に見えた。全11曲からなる当日のセットでは、深い感情や残酷な疑問を歌ったポップソングさえも湿っぽくならない、アップリフティングなムードを貫いてみせた。『ワイルド・ハート』で見事なギターソロを披露した彼は、『ヘイト・ザット・ユー・ノウ・ミー』と、アコースティックなアレンジが施された『アルフィーズ・ソング(ノット・ソー・ティピカル・ラヴ・ソング)』では、ゲストとして登場したカーリー・レイ・ジェプセンとデュエットしてみせた。「とことん楽しまなくちゃ!」という彼の呼びかけを受けて肩車をし始めたオーディエンスは、満面の笑顔で思う存分に跳ね回っていた。

X JAPAN

Koury Angelo for Rolling Stone

ビヨンセが一世一代のパフォーマンスを披露していた頃、モハーヴェ・テントではメロドラマ的な曲の数々で世界的成功を収めた、X JAPANがステージに立っていた。客入りはやや寂しいながらも、最前列に陣取った熱狂的な信者たちをはじめ、集まったファンによる大合唱がテント内にこだました。ハードなロックから涙を誘うバラードまでプレイした当日のステージには、リンプ・ビズキットのウェス・ボーランド、そしてガンズ・アンド・ローゼズのリチャード・フォータスがゲストとして登場した。火を噴くようなメタル風のリフで幕を開けた『ジェイド』では、シンガーがグラムロック調のメロディを英語詞で歌い上げた。バンドのマスターマインドであるヨシキは、上半身裸で首にネックカラーを着けた状態で激しくドラムを叩き、時にはピアノで優しい旋律を奏でた。クライマックスでは恒例となったコールアンドレスポンスを行い、「俺たちの名は!」というバンドの呼びかけに、熱狂的なファンたちは「X!X!」と叫び続けた。

プリースツ

Koury Angelo for Rolling Stone

DC出身の4人組、プリースツが土曜の午後にソノラ・テントに登場した時、オーディエンスの数は切なくなるほど少なかった。『ニッキー』(ニッキー・ミナージュに捧げたトラック)をプレイするにあたり、シンガーのケイティ・アリス・グリアーは彼女をバンドのショーに招待したことを明かした。「忙しくて来れなかったみたいだけど」彼女はそう言っておどけてみせた。しかし本能的なポストパンクサウンドとグリアーのシャウトは、集まった数少ないオーディエンスを熱狂させた。世界がより不穏な方向へと歩を進めてしまった週末に、プリースツが上げる魂の叫びは切実に鳴り響いた。

ザ・リグレッツ

Koury Angelo for Rolling Stone

ロサンゼルス出身の4人組パンクバンド、ザ・リグレッツは毒を滲ませたガレージ寄りのポップロックを、ワイルドなスタンスで鳴らしてみせる。ソノラ・テントに登場した彼女たちは、ザ・スウィートが1973年に残したグラムロックのクラシック『ザ・ボールルーム・ブリッツ』のカバーで、フロアにモッシュピットを発生させた。小さなステージでの短いセットではあったものの、バンドが強烈な印象を残したことは疑いない。

Hardeep Phull, Steve Appleford / Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE