俺が初めて音楽を知ったのは7歳のとき。母が何かと交換したギターとケニー・ロジャースの『Learn to Play Guitar』というレコードを持って帰宅した日だ。子どもの俺に両親はレッスンを受けさせてくれた。先生は小さなパーテーションの中でパイプをふかしていて、スケールの教則本を開くだけで、パイプの煙とヤル気のなさで子どもたちをいじめていた。2週間ほど通って俺はやめた。そして、ギターを階段の上から地下室へ放り投げたら、都合よくチューニング用のペグが壊れた。そのギターは俺が15になる頃まで地下室で眠っていたよ。その頃、近所にアル・パリネロという男が越してきたんだ。アルはラウンジや結婚式で演奏していて、本当にいい人、家庭人だった。彼は俺を含む数人の子どもに興味を持ち、俺たちに幾つか曲の弾き方を教えてくれた。
最初は、アニマルズが演奏する「朝日のあたる家(原題:House of the Rising Sun)」。アルと一緒に時間をかけてゆっくりと練習した。その次がシン・リジィの「The Boys are Back in Town(邦題:ヤツらは町へ)」。俺はけっこういい加減にやっていたけど、練習はやめなかった。2週間くらいして、普段落ち着いた物腰のアルが声を荒げて「もう時間の無駄遣いはやめる。来週できなかったら、それで終わりだ!」と、俺に向かって叫んだ。それが効いた。それ以来、今でも俺は毎日練習を欠かさない。アルは1995年に亡くなってしまった。それ以来、俺のギターにはA.P.のイニシャルが刻まれていて、毎日練習することのリマインダーになっている。そのことに感謝したい。アル・パリネロ、ありがとう。