SKY-HIライブレポ:答えと希望と可能性を宿した音楽

少しだけ脱線する。SKY-HIのラップではいろんな問題が提起されている。では、その答えはどこにあるのか? 残念だが、音楽にも文学にも哲学にも“答え”は示されていない。芸術や人文学というのはそういうものだ。じゃあどうすればいいんだ?っていうことになる。個人的にはいろんな人と話をするしかないと思っている。私たちにできることは、とてもアナログだが、いろんな人と話すことなんだと思う。そんなことに実は答えと希望と可能性が宿っている。



SKY-HI自身もライブのMCで、歌う意味について「歌や音楽ほど、同時に大勢の人に何かを伝えられるコミュニケーション・ツールはないと思う」と言っていた。音楽を媒介にして不特定な人々が集い、そこで人々が「話す」ことが始まれば、何かが変わる予感はする。そんなことを満員の名古屋国際会議場センチュリーホールで「フリージア~Epilogue~」を聴きながら思った。このお互いを知らない人同士であふれた空間は、無限の可能性の空間なんだと思えた瞬間だった。

いろいろな思路をめぐらせたCパートに続いては、音楽的な素養が強いDパートへ。ここでは、新旧のブラック・ミュージックがメドレーで演奏され、音楽の歴史の継承が行われた。

最後はEパート。出だし3曲はラップのバラードで、しかもSKY-HI自身によるピアノ弾き語りだ。先述したMCでの「歌や音楽ほど、同時に大勢の人に何かを伝えられるコミュニケーション・ツールはないと思う」という言葉が、まさに実践されたような瞬間だった。メロディに乗った言葉がオーディエンスの心に届いてゆくさまが手に取るようにわかった。

そして、Eパートの7曲目=本編35曲目としてツアータイトルにもなっている「Marble」を演奏。“混ざるようで混ざらないマーブル模様が綺麗だ”“混ざりゃとても綺麗 汚し合うなんて馬鹿馬鹿しい”“we got it black, white, yellow, red and blue you know there ain’t no need to fight ‘coz we’re all in the same crew.Yeah!”と歌い、バックには戦争のシーンの映像が映し出された。そして最後に「カミツレベルベット」を披露して、オーディエンスと一つになりライブは終了した。

2時間のライブは喜怒哀楽、エンターテインメントと社会性、個人と社会、葛藤と希望、やすらぎと問題提起……音楽が放つべきあらゆる要素が詰まったものだった。しかもどれもがクオリティが高かった。それはSKY-HIのルックスに関係しているのかもしれない。つまり、“どうせアイドルだろ?”という偏見を越えていくには普通に素晴らしいだけではダメだ。完璧なまでに素晴らしいものじゃないと認められない。でも、それをSKY-HIはやってのけている。ライヴ中に何度か放った“逆転”という言葉は、そうした色眼鏡と戦ってきた故の言葉なのかもしれない。

最後に、終演後にもらったSKY-HIのコメントを特別にお届けしよう。

―その覚悟がどんな人にも伝わってくるステージでした。今回の「Mrable the World」で伝えたいことを言葉にすると?

SKY-HI:大きく2つあります。まず1つ目は愛すること。自分との違いとか過ちとかそういうものを愛する。あと何よりも自分自身を愛すること。結構それが大事かもしれないです。自分自身を愛する自己肯定感の低さみたいなものってすごい悲しいことだと思うんです。「私なんか……」ってみんな言うけど、そうではなく「私は強い」でも「私はかわいい」でも何でもいいんですけど、自己愛や自己肯定愛を支えたいなと思ってます。アイ・ラブ・マイセルフはすごいいいことなんだよっていうのが1つ目です。

―2つ目は?

SKY-HI:愛することとか平和主義って、ニコニコしてOKみたいなイメージに感じるかもしれないけど、たぶんそうじゃないんだと思うんです。これは絶対にノーだっていうこと、戦う姿勢が本当は愛とか平和に実はすごくコミットしてると思うので、その両方を大事にする視点を伝えたいです。愛とか平和とかっていう話をするとヒッピーみたいなフワっとしたものになりがちだけど、今の日本の状態では、戦う意識みたいなものが絶対に必要だと思っていて。でも、そういうメッセージって深くなるし重くなるから、それがまったく重く感じないくらい、まずは踊らせる、エンターテインする必要があった。だからCパート作りながらAパートをいかに楽しくするかを考えてました。Cパートをいかに本気でやるかっていうのと同じくらいAパートを「これってディズニー?」くらい史上最強のエンターテインメントにしたんです。

【SKY-HI TOUR 2018-Marble the World-  2018.03.25(日)@名古屋国際会議場 センチュリーホール SETLIST】

~Aパート~
M1 BIG PARADE
M2 Blanket
M3 逆転ファンファーレ
M4 愛ブルーム
M5 Silly Game
M6 Seaside Bound

~Bパート~
M7 Blame it On Me
M8 Bitter Dream
M9 Jack The Ripper
M10 Double Down
M11 Limo

~Cパート~
M12 Young,Gifted and Yellow
M13 十七歳
M14 Over The Moon
M15 RAPSTA
M16 F-3
M17 Walking on Water
M18 何様
M19 Front Line
M20 フリージア~Prologue~

~Dパート~
M21 One Night Boogie
M22 Beat it
M23 VERY BERRY
M24 Uptown Funk
M25 アドベンチャー
M26 September
M27 Ms.Liberty
M28 One Night Boogie(後半)

~Eパート~
M29 クロノグラフ
M30 キミサキ
M31 アイリスライト
M32 ナナイロホリデー
M33 スマイルドロップ
M34 新曲
M35 Marble
M36 カミツレベルベット

SKY-HI TOUR 2018-Marble the World-
2018.04.21 (土) 千葉県:幕張メッセ イベントホール
2018.04.22 (日) 千葉県:幕張メッセ イベントホール
2018.04.27 (金) 兵庫県:神戸国際会館こくさいホール
2018.04.28 (土) 京都府:ロームシアター京都メインホール

SKY-HI
http://avex.jp/skyhi/

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