WWEの舞台裏で活躍する全身タトゥーのコメンテーター、波乱万丈の歩み

2014年の初めには、グレイブスはWWEに将来を見込まれた有望株の一人になっていた。プロレス界の伝説、ダスティ・ローデスもコリーを「次世代の怪物」と評していた。タトゥーだらけの彼は口も達者でプロレス通をうならせていた。ヘンリー・ロリンズのパンク・ロックやトゥールのオルタナティヴ・メタルをバックグラウンドに持つ謎めいた一匹狼キャラは、WWEの未来を約束されていたといっても過言ではない。しかし脳震盪によるダメージでその計画も潰れてしまった。グレイブスは「人生で最悪のときだった」と語る。

「その結果は誰にも分からなかったんだ」と彼の父、ダン・ポリンスキーは回想する。2014年の春、WWEのレジェンドの一人にして重役の一員、トリプルHはオーランドでのNXT大会収録前にグレイブスを呼び出し、彼がリングに上がれないということを伝えた。WWEの医療担当プログラムはグレイブスを医学的に不適格と診断。事実上、コリーはレスラーとしてWWEで戦うことができなくなってしまった。

その知らせを聞いたグレイブスの妻、エイミー・ポリンスキーはグレイブスと一緒に号泣した。「彼は同じことを繰り返し言ってた。『俺は終わっちまった。俺の人生はおしまいだ』って」

2014年4月、ニューオーリンズでグレイブスはWWEの声ともいうべき実況アナウンサーのマイケル・コールとビールを飲んでいた。『レッスルマニア30』が開催された週末で、グレイブスは脳震盪の影響で故障者リスト入りをしていたが、それでも微かな希望を持っていた。

「自分ではなぜ門が閉ざされているのか理解はできていた。でもそのときは受け入れたくなかった」とグレイブスは語る。「ここにたどり着くまでに一生をかけたのに、それが終わってしまったんだ」

NXTでのトレーニングを通してグレイブズはオーランドでコービンと行動を共にした。そのおかげで少しはマシな夜を過ごせた。グレイブスとコービンは2人でよく飲みに出かけた。「正直、見てられなかった。彼は家族を亡くしたみたいになっていた。あれから彼がどうなっていくのか本当に分からなかったんだ」とコービンは語る。

ピッツバーグ時代にラジオでバイトした経験があったということと、コールの助けもあって、WWEはグレイブスに実況コメンテーターのポストをオファーした。2014年12月に初めてアナウンサーとしての契約をしたとき、それは彼の望んでいたものではあったのだが、失ったこの先の選手としてのキャリアにも未練を残していた。

Translated by LIVING YELLOW

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