ボブ・ディラン、ケシャ等が参加、LGBTQラブソング集として歌詞を書き換え再録

既存の曲の歌詞を変更したり、編集したりする場合、該当する楽曲の著作権を管理する楽曲出版社から許諾を受けなくてはいけないのだが、今回のプロジェクトに異論を唱えた出版社はなく、アーティストたちがユニークで突出した演奏を提供してくれたと、マーフィーは説明しながら続けた。「ディランは、ずっと社会と音楽の変化を最前線で見てきた自身の歴史を表現してくれて、このプロジェクトの象徴的な存在となった。セイント・ヴィンセントはアーティスティックな限界を押し上げるような録音物を提供してくれた。ケシャは自由主義と不屈の精神がこもった歌声を披露した。ベン・ギバードは彼のメロディシズムが奏功して、ビートルズの楽曲を難なく感動的に演奏していた。そして、ヴァレリー・ジューンの声には永遠を思わせるものがあり、新たに加えられた歌詞がよりパワフルに響いてきた」

「あの曲をダイナ・ワシントンのように歌うのは本当に難しかった。だから『いいわ、自分の歌い方で歌う』って決めたの」とジューン。そして、「でも、あの曲は聞いているだけでとても面白くて、ダイナのような声の抑揚やその他の歌のテクニックを取り入れてみようとしたわ。彼女が歌の女王であり続ける理由がこれだとわかった。高音を出したり、ブレークしたり、歪ませたりすることが出来る歌手はいるけど、彼女と同じように出来る人はいないもの。それに、彼女が声に抑揚をつけるときのブレスの軽さと重さの使い分けも彼女にしか出来ない。あの曲は本当に偉大な曲なの」と続けた。この曲の作曲家ノエル・カワードはゲイだった。実は「マッド・アバウト・ザ・ボーイ」には削除された歌詞があり、その部分は同性愛を示唆している。

しかし、メッセージの内容と同じくらいジューンの心を捉えたのが楽曲のサウンドだった。「この曲を聞いた途端、『この曲は普段やっているフォーク、ブルース、ロックンロールの曲とは全く違うものになる』って確認したの。それに、最近はビリー・ホリデイや昔のジャズ・シンガー、ビッグバンドを聴きまくっていたから、『マズいわ、私、気が変になったかも』とも思った。でも集中し始めると、行くべき方向が自然に見えてくるから、あの曲を聞いたあとの私は『ええ、この曲が大好き。この曲をやりたい』と思ったわけよ」とジューンが説明してくれた。

このコンピレーションEPのリリースが近づく現在、マーフィーは包摂のメッセージを伝え続ける他の方法を模索しながら心を踊らせている(ちなみに4月21日のレコード・ストア・デイにアナログ盤がリリースされる予定だ)。マーフィー曰く、「もっと曲を増やそうと思っていて、このプロジェクトが新曲を発表できるきっかけになるといいと思っているんだ。現代のラヴソングがどんなものなのかを、みんなが新たに考える手段になってくれれば嬉しいし、音楽だけじゃなくて、他の方法にも発展させられると思う。みんな、他のアートフォームでこのテーマを表現してくれないか?」

Translated by Miki Nakayama

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