映画『嘘を愛する女』中江監督が語る、TSUTAYA発掘コンペ優勝と映画制作秘話


“自分が本当にやりたいこと”へのブレない愛と意志を持とう


ーそもそも、このTSUTAYAが主催する発掘コンペティション(=TCP)に応募されたきっかけを教えてください。

『嘘を愛する女』は実際の事件から着想を得て、元になるストーリーを10年くらいかけて1人で書き溜めていました。それを、今回ラインプロデューサーを務めていただいた友人の久保田 傑さん(オフィス・シロウズ)と「いつか本格的に映像作品にしたいね」と話していた矢先、シロウズにTCPのチラシが届いたんです。「グランプリには5000万円出してくれるってよ」って。

ー5000万ですか!映画作りはまず資金調達が重要ですからね…それは魅力的ですね!

なので、応募してみようと思って。まず書き溜めていたストーリーをリライトして企画書に仕上げ、1次審査をクリア。それからシナリオやイメージイラストに進めて2次審査、そして3次審査は、5分程度のイメージ映像を含めた最終プレゼンです。当時は2次と3次の間が2週間ほどしかなく、友人知人総動員でバタバタと準備しました。

ーCCC社長も含めた審査会の満場一致でグランプリを獲得されたとのことですが、印象的なプレゼンだったのでしょうね。

最終選考に残った候補者は7人ほどいたのですが、プレゼン時間は10分間と決められていたので、僕たちは時間内に収まるように、話す内容もかなり添削して、徹夜でリハーサルを繰り返して当日に望みました。

ー「制限時間内に、企画趣旨とやりたい意志をシンプルにわかりやすく、かつ情熱を込めて話す」というプレゼンの基本をしっかり忠実に守ったからこそのグランプリ獲得だったのでは?

当時はCM制作会社の社員だったので、クライアントへのプレゼンは日常茶飯事で慣れていましたし、何より、撮影や編集などの制作面でもコスト面でも、仕事のあらゆる人脈をフル活用できたのが功を奏したのだと思います。

ーこれからTCPに挑戦するクリエイターたちに、勝ち残るためのアドバイスをお願いします。

「私もTCPに出したい」と相談されることがあるのですが、とくにCM業界人の場合、普段の仕事内容が「ひとつのお題に対してなるべく多く企画を用意する」必要があるため、映画に対しても幾つかの企画を考えてくる。「で、この中でいちばんやりたいのはどれなの?」と聞くと、彼らは答えに詰まる。仕事柄、お題があり、かつ相手に選んでもらうことに慣れてますからね。でもオリジナルの映画では「自分はこれがやりたい!」という明確な意志が強くないと、2時間にわたる脚本なんて書けないし、運よく審査をクリアしたとしても、その後長くて険しい過酷な道のりが待っています。中途半端にただ「面白そうだから」とか適当に考えた企画が通ってしまったら、逆に災難です。とくに映画製作は本当に多くの会社のさまざまな人と一緒に作るので、ブレない確固たる自分がいないと途中で挫折してしまいます。本当に自分が面白いと思っていることを見つけて、それをどういうふうに表現するかを考える。思いつきだけでは見透かされてしまうと思います。

ーでは、監督の今回の“本芯”はなんでしょう?

「愛は嘘を超えられるのか?」ですね。

ー「嘘も含めて、それでも丸ごと愛する」という覚悟ですね。次回作を期待しています。

予定はないのですが、TSUTAYAさんが出資してくださればまた頑張ります(笑)



TSUTAYA主催映像企画コンペ 次世代の映像クリエイター、求む!

CCCグループのTSUTAYAとカルチュア・エンタテインメントが主催する、次世代の映像クリエイターを発掘するコンペティション、「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2018」が今年も開催される。募集受付期間は4月5日~6月5日。映画作品の企画書が審査の対象となる。受賞作品には総製作費(5千万円から)を、バックアップし映像化を目指す。

http://top.tsite.jp/special/tcp/

『嘘を愛する女』
2018年1月公開作品
配給:東宝
(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会
http://usoai.jp/

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