環ROY「ラップをきっかけに知った見方と対話の重要性」:80年代生まれの焦燥と挑戦

「快楽性の高い要素と意味の分からなさが同時にやってくるところがアートの可能性」

ー知ろうとする姿勢が大切だ、と。

環ROY:分からないからって、否定したり、拒絶してしまうようなことはなるべくしたくないなって思っています。でも、そういうこと言っちゃうと角が立ちますね。だって、混乱を嫌うというのは生物としては当然だから。適者生存において混乱は死に結びつくことです。だから分からないことを気持ち悪がるのは普通のことだとも言えます。

ーなるほど。

環ROY:重力や酸素、太陽とか気候とか、そういう普遍的な環境は別として、それ以外のあらゆることって、角度によって見え方が全然変わってくると思うんです。例えばヒトラーは悪の独裁者って見方をされがちだと思うんですけど、当時は犯罪率を減らしたり、世界で初めての高速道路ネットワークを作ったり、それこそ音楽ライブでは必要不可欠なPAシステムを完成させたり、自動車を普及させたりとか、現在につながる功績もあったりするわけですよね。なんていうか、だから、なにもかも一概には言えないっていうか、どこを切り取るかで変わってしまうと思うんです。

ー違和感を持つものとの対話や分からないものの受け止め方を探求している、ということですか?

環ROY:人って、過去の自分の実存的な快楽で取捨選択をすると思うんです。どこまでいっても結局はそれだけだと思います。でも、だからこそ拒絶をしないという態度や、もっというとこの違和感はなんなのだろうと解釈を試みることに可能性があるように思っています。

ーいつ頃からそう思うようになりましたか?

環ROY:どうでしょう。分からないです。少しずつ言語化できるようになってきて、今はその途中なのかもしれません。中学生の頃、ラップを好きになったのもそもそも“意味が分からなくて惹かれる”という部分があったと思います。BUDDHA BRANDというラップグループの音楽を初めて聴いたときに“かっこいい!”と“歌詞が意味不明すぎる!”が一緒に来たみたいな感じだったんです。快楽性の高い要素と意味の分からなさが同時にやってくるところがアートの可能性なのかもしれないですよね。快楽と混沌が同時にあるって素晴らしいなって思います。


・環ROYがレコメンドするもの
「人間発電所」
1996年リリース、BUDDHA BRANDの1stシングル。当時、日本のヒップホップ界を震撼させたとされる、伝説的な1枚。この曲を初めて聴いたときの衝撃を、これまでにも多くのインタビューで環ROYは語っている。

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