有名ロックスターたちの引退ラッシュ、突然引退を宣言する理由とは何か

ザ・フーは、ラストツアーを発表した1982年にローリングストーン誌の表紙を飾った。「自分たち自身のパロディになってしまう前にね」とロジャー・ダルトリーは説明した。筆者の所有する本号はニッキー・ミナージュよりも年上だが、ザ・フーは2018年、オークランド、デイトン、ロチェスターを始めとする各地で『シー・ミー・フィール・ミー』を再び聴かせている。誰が彼らを非難できるだろうか? 留まることを知らないロッカーたちを批判できるのは、潔癖症のカマトトぐらいだろう。彼らに他に何をして欲しい? プレイヤーやハスラーにとっては、“今夜きめよう”なのだ。

デヴィッド・ボウイは1970年代、「私は私の最後のロールをロックし終えた」などという楽しげで意味不明な言葉を残し、数年おきに引退しているようだった。ボウイは結局、傑作『ブラックスター』で幕を引いた。エリック・クラプトンは、2001年夏に行ったローリングストーン誌との真剣なインタヴューで、ハイウェイのドライブを諦めてキーを置くことを正式に表明した。「これで本当に最後だ」と彼は誓った。「消化不良を起こしているんだ。疲れた。途中で飽きてしまって、長いソロパートをもう弾くことができない」と語るギターの神様が想いを込めて叫ぶ『レイラ』を、他の誰が真似できるだろう? とにかく、彼自身が信じていたように、ほとんど誰もが彼の言うことを信じた。そして誰もが知る通り彼は、北米、日本、ドバイ、タイなどを回った後、2018年夏にはヨーロッパでのコンサートが控えている。ロードは永遠に続くのだ。

だが、我々が今目にしているのは、これまでとはまた違った状況だ。ロックスターが自分の健康状態や酒量などを気にしなかった時代は、幕の引き方を考えるほど長くは生きられなかった。今やエルトン・ジョンを始めとするスターたちは、ツアーで体を壊すことなく音楽を作り続けることを望んでいる。或いは、永久に魔法の杖を折るスターもいる。ポール・サイモンは、「できれば音響のよいホールで時々コンサートを行いたい」とほのめかしている。完全引退していなくとも、復活コンサートでサウンドの担当者に文句を言う姿は、ピーク時のサイモンそのものだ。

映画『ワイルドバンチ』で、ウィリアム・ホールデン演じる白髪交じりの無法者は、最後に一旗揚げて引退しようとする。アーネスト・ボーグナイン(演じる役)は、「引退して何をする?」と尋ねる。この言葉こそ、ロッカーたちに自分が壊れるまでツアーを続けさせる原動力なのだ。ドキュメンタリー映画『ラスト・ワルツ』に登場するほとんどのベテランたちは結局復帰したが、中には終わりかけているベテランもいる。今やダイアモンドが引退し、いったい誰が最後のワルツを踊ることになるのか、知る由もない(筆者は、スパンコールのパンツを履いた頑固者のアイルランド人に賭ける)。しかしベテラン世代は、自分たちの音楽作品やファンと真摯に向かい合いながら、引退への新たな道を模索している。引退の方法に雛形は存在しない。長い歴史の中でロックスターたちは、この答えを出すことができていない。しかしそれこそがロックスターなのだ。未知の世界への旅立ちといえる。ベテランたちにはその時が迫っている。
グッバイ、“イエロー・ブリック・ロード(黄色のレンガ道)”。

Translation by Smokva Tokyo

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