デビューアルバムから11年、MGMT流「過去」との向き合い方

MGMTのアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(左)とベン・ゴールドワッサー(右)(Photo by Ryan Lowery for Rolling Stone)

今年のフジロックにも出演が決まったMGMT。モダン・サイケデリアの旗手が語った傑作『リトル・ダーク・エイジ』の制作過程、初期の代表曲に対する複雑な思い。

2007年にデビュー作『オラキュラー・スペクタキュラー』を大ヒットさせたMGMTは、以降の作品に対する世間の評価をよく自覚している。コネチカット州ウェズリアン大学で出会い、サイケデリックなシンセポップ・デュオとして活動を開始した2人が、学生寮のベッドルームで生み出した「キッズ」「エレクトリック・フィール」「タイム・トゥ・プリテンド」等は、当時のインディ・キッズたちのアンセムとなった。しかし、2010年作『コングラチュレイションズ』と2013年作『MGMT』は、ファンの期待に背を向けただけでなく、批評家やレコード会社をも失望させることになった。「3作目を出した後はいろんなことを書かれたよ」。フロントマンのアンドリュー・ヴァンウィンガーデンはそう話す。「大半はこういうやつさ。『MGMTはポップという魔法を使い果たしてしまった。彼らが大衆的なレコードを作ることは二度とないだろう』」

彼ら自身もおぼろげにそう感じていたことを理由に、2人は休養期間を設けることにした。キーボーディストのベン・ゴールドワッサーは、婚約者とともにロサンゼルスに移り住み、ヴァンウィンガーデンはクイーンズのロッカウェイビーチ付近に一軒家を購入し、自宅スタジオでの実験とサーフィンに明け暮れるようになった。かつて2人は延々と続くジャムセッションから曲を生み出していたが、それ以降はメールでのファイル交換が基本になったという。「離れて暮らすようになったことは、音楽性の面にも大きく影響した」ゴールドワッサーはそう話す。「いざ一緒にスタジオ入りした時に、徹底的に集中しなといけなくなったからね」

次回作の制作を目的に2人がスタジオ入りした時、プロデューサーのパトリック・ウィンバリー(ソランジュ、ブラッド・オレンジ等)が2人に与えた指示は、ソングライティングの基本に忠実になることだったという。「学生だった頃のように、僕らはヴァースとコーラスを中心にした曲作りに立ち返った」。ヴァンウィンガーデンはそう話す。「トーキング・ヘッズやホール・アンド・オーツ、それに僕らの両親も好きだった80年代のヒット曲なんかの影響を、包み隠さず形にしていった。初心に返った気がして、すごく新鮮だったよ」

Translated by Masaaki Yoshida

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