ビートルズ、パブ・バンド時代のレア音源、その魅力とは?

Colin Fleming | 2018/02/10 11:00

| 若き日のファブ・フォー(Photo by K & K Ulf Kruger OHG/Redferns) |


テープを買い取ったBukレコーズの代表、ポール・マーフィーはウィリアムズとタッグを組み、同作を世に送り出すために新レーベルLingasongを立ち上げた。何十万ポンドもかけてそのテープの音質が修正されたことは、リスナーたちは知る由もなかった。

高音質で音楽を楽しむことが当たり前となっている現代において、同作はタイムカプセルから取り出してきたかのような代物に違いない。それでもなお、その音楽は少しも色褪せていない。ラウドで大胆でありながら、時にはユーモアのセンスも覗かせる。この直後にバンドは、ブライアン・エプスタインの手によって変身を遂げる。しかし同作から浮かび上がるのは、後輩をいたぶる威張った上級生のような、やんちゃな若者たちの姿だ。彼らは確信犯的にその状況を楽しんでいたに違いない。

ハンブルクでのショーに対して消極的だったというバンド側の主張とは裏腹に、同作で聴くことができるパフォーマンスはどこまでも情熱的だ。ハンブルクに寄港するタフな船乗りたちが彼らに熱狂した理由は、翌年に発表されたBBCバージョンを凌ぐ熱量を放つ『スウィート・リトル・シックスティーン』を聴けば明らかだろう。



ハリスンのリードギターは唸りを上げ、レノンのリズムギターに引けを取らないほどハードにロックするソロパートには、スタジオでは発揮できない爆発力が宿っている。荒削りな『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』でのポール・マッカートニーのヴォーカルは、デビューアルバムの幕を開ける彼の「ワン・ツー・スリー・フォー!」のカウントが持つ魔法めいた力を物語っている。『アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・クライ(・オーヴァー・ユー) 』におけるリンゴ・スターの荒ぶるドラムは、若かりし頃のキース・ムーンを彷彿とさせる。

しかし、ハンブルクではバンドの力を最大限に発揮できると語っていたハリスンでさえ、同作は「ビートルズのディスコグラフィーにおいて最もお粗末な作品」としている。最終公演の終了後に、泥酔したままメンバー同士で乾杯した時の祝福ムードを、彼は今作から感じ取ることができなかったのだろう。たとえそれが、かつて彼らが何よりも大切にしていたものであったとしても。しかし、もし同作が1962年の大晦日に録音されたものだったとすれば、彼らの意見は違ったのかもしれない。翌年にその人気が爆発するビートルズにとって、ハンブルクでの下積み時代の最後の公演となったそのショーは、彼らにとっても思い出深いものだったに違いないからだ。

バンド側の抵抗も虚しく、1977年4月に26曲を収録したバージョンがドイツで発売された。その後海賊版と思しき再発盤も多数出回ったが、度重なる裁判の末、1998年にバンドはその権利を勝ち取った。しかしビートルズのコアなファンが、その頃までには間違いなくその音源を耳にしていたことを考えれば、その判決の意義は決して大きくなかった。同作は現在でも比較的容易に手に入れることができる。

現在耳にすることができるその音源は、当時のものに比べれば音質が改善している。しかし同作の真の魅力は、フロアに舞う埃や天井から滴る水滴、充満したホッピーの香り、そしてステージ上のバンドが放つ爆発的なエネルギーを、まるでその場にいたかのようにリアルに感じられる点にある。彼らは本当にそのショーに消極的だったのだろうか?「俺はロードランナーさ、ハニー!』曲間にジョンが発する歓喜の雄叫びは、その答えを何よりも雄弁に物語っている。
Translated by Masaaki Yoshida

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