マーク・ハミルが明かすルーク・スカイウォーカーの実像

「ジョージ(・ルーカス)はベイダーがルークの父親だっていう設定を、最初から念頭に置いてたのかなって疑問に思ったこともある」

ー育ての親である叔父と叔母の焼死体を目の当たりにしたり、実の父を自らの手で火葬したり……。

RJ それがヒーローの生き様なんだよ。英雄の人生には多くの代償がつきまとう。愛する人間が焼かれていくさまを目の当たりにするのも、その一つなんだよ。

MH 生易しい道じゃないことは確かだね。でもそれがヒーローの役目だから。良くも悪くも壮絶な人生ではあるけれど、それが僕が生きる現実よりも厳しいものかっていうと、それはどうかな。できることなら、僕はこの現実よりもルークの人生を歩みたいと思うことだってあるんだよ。

ーどんなに孤独な人生であったとしても?

MH そうさ。ネタバレするといけないからはっきりとは言えないけど、そういうことだよ。ライアンには何度もこう言ったんだ。「この作品の中で触れられていないとしても、ルークが歩んできた道のりを意識しないわけにはいかないんだ」ってね。真っさらな気持ちで臨むっていうのは無理なんだよ。今のルークが諦念に満ちているのは、過去があってこそだから。『サージェント・ペパーズ』の50周年記念のドキュメンタリーで、リンゴがこう話してたんだ。「あの頃、人々は愛と平和こそがすべてだと信じていた」ってね。彼はそう話しながらも、そのムーヴメントがいかに潰えたかを語っていく。僕は当時のことを思い出してた。あの頃、人々は自分たちが力を握ることで、この世から戦争はなくなると信じていた。大麻が合法になり、女性蔑視なんてものが存在しない世の中になると信じてた。ビートルズを初めて聴いたとき、僕もその一人になったんだ。でもその希望は打ち砕かれた。あの頃感じた失望を、僕はルークに重ね合わせようとしたんだ。キャリーはいつもこう言ってた。「これは家族の物語なの。たとえ崩壊していたとしても、家族は家族だもの」

実を言うと、ジョージはベイダーがルークの父親だっていう設定を最初から念頭に置いてたのかなって疑問に思ったこともあるんだ。台本は何度も書き換えられてるからね。ボツになった女性キャラクターもいるし、かつてジェダイの騎士でありながら密輸業者として生きているっていう、オビ=ワンとハンを組み合わせたようなキャラクターもいたよ。シナリオの完成までに、いろんな紆余曲折を経てるってわけさ。チューイは最初からあまり変わってないけど、耳がすごく尖ったバージョンもあった。ルークも同じで、そんなふうに何度もディテールが変更されてるんだよ。ダークホースコミックスが出してる『Star Wars』は、ルークが女性ってことになってる初期の台本がベースになってるはずだよ。

ー長年にわたるファンの期待はプレッシャーになりましたか?

MH それを意識したら、まともな演技はできなかっただろうね。馬鹿げてるけど、僕はライアンにはこう言ったんだ。「誰の目にも触れない、無名のアート映画に出演しているつもりでやる」ってね。それぐらいプレッシャーを感じてたってことだよ。

RJ でも撮影は実際にそんな感じだったんだ。自分たちの信じるとおりにやる、そういう信念みたいなものが現場に漂ってた。

MH それ以外のことは排除しようとするようなところがあったね。

ー『スター・ウォーズ』を手がけることは名誉であるに違いありませんが、ジョージ・ルーカスはその破格の成功がもたらしたプレッシャーに屈してしまいました。彼は『ファントム・メナス』まで、メガホンを手に取ろうとはしませんでしたよね。

RJ 実際に撮影が始まるまでは、僕もプレッシャーを感じていたよ。6人のスタッフが(C-3POを演じる)アンソニー・ダニエルズを取り囲んでいるのを目にしたときは緊張したね。パインウッドにあるセットに集まった人々はみんな、『スター・ウォーズ』に携われることに興奮してた。映画の世界に生きる人間すべてにとっての夢だからね。僕らはボタン一つでアンソニーがあっという間にC-3POに変身できるシステムを開発したんだけど、それを見ててこう思ったんだ。これが砂漠のど真ん中で、何一つ予定どおりに機能しなくて、チームの士気も低くて、誰もがロクでもない作品になると思ってるような状況だったとしたら……考えただけで気が狂いそうになるよ! ジョージは実際にそういう悪夢を経験したわけだけど、僕たちの場合はその真逆だったと言っていいと思う。

MH スタッフは正真正銘のプロたちだったね。アフリカでの撮影で、僕に愛想を尽かさなかったくらいだからさ。

RJ 彼らにしてみれば、やるべきことをやっただけなんだろうけどね。それでも「あのライトセーバーを手にしてるなんて、今でも信じられない」なんて言ってる人もたくさんいたよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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