小林武史が語る、ファレルが100年後に託す地球温暖化へのアクション

2017年11月13日(月)、上海にて行われた「ルイ13世」のシークレットイベントに出席した、小林武史氏

フランスの最高級コニャックブランド「ルイ13世」が、ファレル・ウィリアムスとともにオリジナル曲「100 Years: The Song We’ll Only Hear If We Care」を制作した。100年後の2117年にリリースされると発表され、話題を集めている。2017年11月13日、上海にて行われたシークレットイベントで一度限り披露された。

世界でたった100人しか聴くことができなかった、この貴重な瞬間に立ち会った日本人がいる。地球温暖化をはじめとした環境問題に対して、長年活動をしているアーティスト、小林武史だ。「ルイ13世」が”音楽”を通して世界へ掲げるメッセージ、そして、そのプロジェクトへ賛同したファレル・ウィリアムス、双方の思いがどのような形で表現されたのか。上海から帰国した翌日、小林のレコーディングスタジオでイベントについて聞いた。

会場で聴いたファレルの曲ですが、冒頭はフォーキーな響きで、日常感はあるのに不思議とファンタジーなんです。地球という場所に僕らがいるということが、ある種ファンタジックなことなのかもしれない。そう思わせるような始まりがあって、でも途中からマイナー感のある響きになり、現実を突きつけてくるような雰囲気に変わる。まさに警鐘という意味なんだろうけど、メロディとアレンジにどこかノスタルジックな要素もあって、大仰にならない。

その点はさすがファレルだなと思いました。


ファレル・ウィリアムス作曲による特別な一曲が録音されたレコード。この盤はコニャック地方 の土を原料とする粘土で作られている。


僕自身、ap bank を2003年に設立して、地球温暖化をはじめとした環境問題に取り組んできました。『不都合な真実』のアル・ゴアさんにもお会いできましたし、「どうにかしよう」という姿勢は僕の中でずっとキープできてるんです。

実感されてる方もいると思うんですが、2017年は世界中がサステイナブルの方向にシフトした重要な年です。ヨーロッパの数カ国では、10年ぐらい経ったらガソリン車の製造をやめるという宣言を出している。逆に考えると、これは新しいビジネスが生まれる可能性が広がったということ。だからこそ、もっと声を上げていく必要があるんだということをファレルは言っていたんだと思います。

こういう話の背景にある「地球について」みたいな部分で考えると、何が正しいことなのか、どうするのが正しいのかという議論になりがちなんだけど、事情を知ってる人からすれば、もどかしいところはあります。どの世界にでもある話だろうけど、既得権益っていうものがあるわけです。エネルギーだと、石油、石炭があって、特にオイルっていうものに関して言えば、動くお金の額もすごいですし、そのパワーを感じない人はいないと思う。そんな状況に対して「やっぱり使わないようにしていこう」っていうのは、確かに大変なこと。でも問題について激論を交わしながらどうするのか考えるのではなく、今回のようにパーティの舞台を使って遊び心とともに発信していく。そういう手法は本当に大事だと思いますし、今後もっと必要になってくる気がします。

ap bank を10年以上やってきた自分も、それは今回すごく感じました。あとファレル・ウィリアムスがいいなと思ったのは、真面目に本気で取り組んでいたこと。舞台はパーティなのに、そのバランス感覚はすごく面白いと思いました。

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