世良公則&ROLLY対談:ツイストの名曲から70年代ロック黎明期を振り返る

By Joe Yokomizo
Photo by Takeaki Hanaya
 
R:話は戻りますが、『あんたのバラード』は関西弁ではないですけど、改めて言われると確かにサウス・トゥ・サウスみたいな感じはありますね。
 
S:うん。歌詞を読んで"演歌みたいだね"って言う人たちもいたけど、大阪では"ブルースやね"って言われていたからね。僕の中で"YOU"は"君"ではなく大阪弁の"あんた"の方がしっくり来たし、その強い響きが好きで。広島から出てきて学生時代を大阪で過ごして、ずっとバンドをアンダーグラウンドでやっていた時の生命力みたいなものをその単語にすごく込めた感じがあったな。だから、全国区でデビューした時、周りはキョトン状態だった。リアクションの違いというか。もちろん面白がってはくれるんだけど、当時の音楽評論家と言われている人たちは"こいつらをどう扱おうか"っていう感じで、あんなのは演歌だ、女の子たちからキャーキャー言われてるし日本語だしロックじゃねぇよって。大阪ではブレイクで溜めれば客が焦れてヒューヒュー! って声が起こって、歌いだすとウォー!! ってなるような、そういうエネルギーを受け止める力が客にもあったんだけど、当時のメジャー音楽シーンの中ではそういう異物のエネルギーを受け止められるような包容力ははっきり言ってなかったんだよね。それよりもティーン・エイジャーの方にあったの。だから、業界の人たちが戸惑っている間にもテレビの音楽番組にリクエスト葉書きが届いて何回も出るようになったりとか、何週も連続で1位を獲ったりすることが出来たんだけど。
 
R:特にあの当時、ツイスト、Char、原田真二のロック御三家みたいなロックをやっているけど明星(MYOJO)とかにも載ってるっていう存在は、コアなロックファンはロックと見なさなかったかもしれません。
 
S:いわゆるアイドル扱いされていたよね。ああいうところに出ていたのは、もちろんレーベルだったり事務所の戦法だったんだけど。Charなんかもそういう面ではすごく苦労したと思うよ。彼は僕がまだアマチュアの頃にアルバムを出していて、それを聴いた時"これで日本は変わるな"って確信したくらいだったんだけどね。だって十代からずっと日本のレコーディングを支えてきた天才ギタリストがプロの作詞家と作曲家と組んで、フロントで歌いながら弾いてるんだから。
 
R:『気絶するほど悩ましい』でしたっけ。
 
―阿久悠さんの作詞で。
 
S:そう。だって、Charのギターが下手だなんて言う奴は1人もいない、むしろ日本で一番上手いくらいに言われているところで正面切って自分のアルバムですって出てきたんだから、すごいことだよ。俺にとってはミック・ジャガーもプレスリーもアイドルだし、ビートルズなんて来日した時に失神者が出るくらい女の子にキャーキャー言われてよっぽどアイドルなのに、ロックファンは神様のように扱ってるじゃない? 僕なんかはそういう世代のスタートだから、そういうアイドル性って絶対に必要だと思うの。でも、当時は"アイドル"っていう言葉が能力のない可愛いだけの奴っていう括りだったから、そう言われることに異常に抵抗したんですよ。自分で曲を書いて詞も書いて演奏していて、たまたまアレンジだけプロと組むことになったりすると"ほらやっぱりプロに手を借りてるんじゃん!"って言われる。いやいや、普通組むでしょ? って(笑)。海外のトップミュージシャンだってプロのプロデューサーやアレンジャーと組んでるよと。そういうふうに受け入れ側も準備が出来ていない、包容力のない時代だったから、やる側も余計意固地になって喧嘩することしか解決法がない、みたいな。
 
R:そう考えると、今はずいぶんバンドマンがおとなしくなったというか。そうでもないのかな?


Photo by Takeaki Hanaya

S:今のバンドは、そういうのを利用することを覚えたんだと思う。デビューくらいの時から印税計算できるのよ(笑)。契約内容もちゃんとチェックしているだろうし。さらにSNSとかを使って世論をコントロールして、自分たちで受け皿を作ってその上でビジネスをしている。だから、"バンドメンバー"はいても"ミュージシャン"はいないと僕は思うんです。ミュージシャンとしてきちんと積み重ねていけばバンドも成長できるし音楽界も豊かになるんだけど、自分が豊かになるところで終わってしまってるから。テレビとかを見ていて面白いバンドが出てきたと思っても、その一人一人が覚えられないのはなぜかというと、ミュージシャンじゃないからなんだよね。それぞれの個性というより、バンドメンバーとしての役割を果たしている感じ。でも、音楽雑誌のインタビューとかを読むとすごくミュージシャン的なことを言っていたりするじゃない。音楽的なことを語れるんだよね。俺なんかは、語る前に弾け! とか思っちゃうけど(笑)、そういう言葉をメディアで発信することで今のファンの人たちにちゃんと響いているんだとしたら、それはそれで1つの方法論だとも思う。僕は若い頃ミュージシャンという存在を認めてほしくて喧嘩ばかりしてたので、若いミュージシャンもすべからく認めているんです。どんな音楽でも"バンドやってます"っていうだけで"バンドやってんの!? ギター弾いてるの? 何持ってるの? レスポール?"ってなる。楽器にも興味があるし、楽器を弾いているその人に興味があるので、プロだろうとアマチュアだっろうとバンドやってますミュージシャンやってますって言うと嬉しいんだけど、それミュージシャンじゃなくてメンバーだよね? っていうのが、ちょっとだけ悲しい。

RECOMMENDED

TREND