中野雅之が語る、BOOM BOOM SATELLITESの20年

By Joe Yokomizo
BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之が20年間を語る
BOOM BOOM SATELLITES(以下:BBS)が歩んだ約20年は、デビュー直前の川島道行の脳腫瘍の発覚により"生きるなら何をするか"を考えるとことから始まり、以来つねに緊張状態の中にあったという。

「本当にスリリングで、エキサイティングな時間でした」ー
中野雅之


先の3月1日にリリースしたベストアルバム『19972016』は、その活動の軌跡をCD4枚・計56曲という膨大な楽曲群によってたどることのできる、アーカイヴ的な作品となっている。
そのすべての作業を終え作品を手放した今、中野雅之が語る現在の心境と、BBSとしての活動の本質とは。

―2010年にベスト盤『19972007』を出した際、中野さんは"「過去の作品を聴くと、当時の自分は未熟だったと思ってしまうから聴いていて辛くなる」と拒み続けたが、聴き直した結果「客観的に面白い音楽だなぁと感じられた」"と仰っていましたが、今回はどうですか? 2010年とはまたぜんぜん違ったモチベーションだったと思うんですけど。
 
そうですね。前回とは全く違います。前回は10周年だからという意味合いが強かったのですが、今回はもっとシンプルに、アーカイヴという意味で手元に置いてずっと大事にし続けてもらえるようなものを最後に作っておかないといけないという使命感があって。
 
―収録曲全56曲をマスタリングしてみて、BBSが作ってきた音を改めてどんなふうに感じましたか?
 
やっぱり普遍性があるんだなって。56曲の中には20年近く前のものから去年リリースされたものまであるんですけど、最初から筋が通ったものがあったのかなって思います。この流行り廃りがあるシーンの中で、僕らの音楽はあまり古さを感じないんですよね。それは、つねに普遍性を勝ち取ろうとしていたからで。100年経ったときに価値があるかどうか、ということをずーっと考えてやってきたので。
 
―なるほど。でもその普遍性みたいなものって、一体何なんでしょうね?
 
ビートミュージックって、昨日作られた音楽が今日古くなっていることが起きるシーンで、1年2年経って聴くと"わぁ、ダサいな"って思っちゃうのが宿命づけられてるジャンルなんですよ。ケミカルブラザーズの1stアルバムとか、今聴いたらひっくり返りますよ。
 
―ハハハハ(笑)。
 
"聴けね〜"みたいな(笑)。冗談抜きで。ただ、それがいいところでもあるんですよね。ヒップホップはその典型ですけど、つまり週刊誌感覚というか、読み捨ていくものの良さでもあるわけで。ただ自分はそこから距離置きたかった。だから、ちょっと矛盾してるんですよ。読み捨てられていくことが良しとされているシーンに首をつっこんでいるのに、読み捨てられるのはイヤだ、と。10年20年後もしっかり読み応えのある、深くドンと突き刺さってくるものを作っておきたい。それは何なんでしょうね? 多分、欲張りなんだと思いますし、クリエイターとしてのエゴというか、自意識がすごく強いんだと思う。
 
―なるほど。
 
それと、今の10代、20代の子はライナーノーツのクレジット欄から、盤を掘っていくなんてことはまずしない。YouTubeのおすすめとか、SoundCloudとかそういうところのリンクを辿っていくだけで、音楽を知ったことになる。それをもう否定しようがないし、そうすると、50年代60年代の音楽も何もかもが全部並列にある状態なんです。で、そのなかで何が良いか、何をピックアップするかはむしろ変な入れ知恵がされてしまって染まってしまっている大人なんかよりもよっぽど純粋なわけですよ。だから、全部がテーブルの上にバーッと並べられて"はい、あなたは何聴きますか?"っていう状況は今のあるべき姿なのかもしれないな、とも思うんですよね。そこにはアニソンもあるし、アイドルもあるし、60年代のヒッピー臭いやつとかもあって。ただ、それだと予備知識を得ることができないわけじゃないですか。60年代はベトナム戦争があって、スライ&ザ・ファミリー・ストーンはレイシズムと関係がある、とか。そういう裏付けみたいなものが取っ払われたときに、ちゃんと価値がある音楽かどうかというのが僕はやっぱり気になるんです。
 
―そういう時代の物語性みたいなものから離れた普遍性だと。今回のベストアルバムのタイトルにしても前回のベストに続き『19972016』という数字だけですが、これも物語性みたいなのを持たせたくなかったから?
 
そうですね。楽曲単位では、たとえば川島君が最後にリードヴォーカルを務めた曲『LAY YOUR HANDS ON ME』は、すごく深い意味を持ってくるけれども、何十曲も詰まっているものに物語性が強いタイトルはふさわしくないような気がしますね。僕もやっぱり、"いやぁ、すごい音楽シーンって変わったな" "世の中変わったな"っていう感覚なんですよ。自分が子供の頃から比べてもそうですし、デビュー当時と比べてもそうです。で、時代に置いてかれた方がいいのか、置いてかれない方がいいのか分からないし、なんとなく過ごすしかないんですよ。ただ、音楽が起こす、不思議な効果にはやっぱりまだ惹かれるので、そこだけ見てればいいかなって。あっ、ぜんぜんどうでもいい話をしていいですか?
 
―どうぞ(笑)!
 
先日、すごく寒い日に近所の居酒屋に入って、お湯割りの焼酎飲んでいたんです。そこのお店、いつもすごく中途半端な音楽かける店で。ジャミロクワイとか(笑)。
 
―今かよ! みたいな(笑)。
 
そうそう(笑)。で、その日もそういう音楽がかかっていたんだけど、いきなりCDが飛んだと思ったらぜんぜん違うタイプの音楽がかかりだしたんです。EDMっぽいんだけど、造りが素人臭くて、歌も英語風だけどちゃんと歌えてない。"これ何だろう?"と思ってShazamで検索したら、アーティストっていうか完全に自主制作の盤だったんです。ホームページとYouTubeに動画がアップしてあって、あとはほぼ手売りに近い通販をやってるだけの人で。僕はプロなので、それっぽいけど稚拙な、そこに至ってない音楽のクオリティってすぐに気がつくんですよ。でも、盤がかかるってことはそういう音楽にわざわざお金払って買ったってことでしょう。"ああいうのも並列にある、こういう時代を生きているんだな〜"って焼酎飲みながらしみじみ思いましたね。昔はレコードを出すこと自体が大変で選ばれた人しか出せなかったけど、今は、誰もが発信者になれる。そういう状態は、僕はあまり好きじゃないです(笑)。
 

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