鈴木慶一が語る、日本語ロックの源流"はちみつぱい"45年越しの真実

By Joe Yokomizo
鈴木慶一が語る、日本語ロックの源流"はちみつぱい"45年越しの真実(C)桑本正士

―なるほど。あと、このデラックスエディションには幻に終わった1stシングル『煙草路地/ビンボー・ダンス』のリハ音源も収録されていてファンにとっては垂涎ものなのですが、当時レコーディングまで済んでいたのになぜ発売されなかったんですか?

それに関しては、知っている人が亡くなってしまったので謎が解けていない。おそらく、当時マネージャーだった石塚さんの意向だと思うんだ。はちみつぱいの曲の中でも『煙草路地』は人気があって、必ずライヴの最後だったりアンコールで演奏していたし、みなさんに手拍子を頂いて盛り上がる曲でもあって。それを録音もしてるのに、なぜシングルにしなかったのかというのは石塚さんにしか分からない。さらには、この『センチメンタル通り』というアルバムを作るにあたって脱退しているメンバー・渡辺勝を呼んで2曲歌ってもらってるのも石塚さんの意向だった。まさにビートルズにおけるエプスタイン&マーティンのような役割だね。

―ですね。

でも、それが結果的には良かったと思う。『センチメンタル通り』は恋愛のアルバムだけど、『煙草路地』は自分探しの歌で、恋愛がテーマではないからね。それを外すことで作品のトータリティが生まれたわけで。実は、そのことに気が付いたのは去年だったんだけど(笑)。あるファンの方が『ロック画報』のはちみつぱい特集に寄稿していて、それによると『センチメンタル通り』は全部恋愛の歌だと。それを読んで、目から鱗だった。このアルバムは、そうすることによって個人的なものじゃなくて普遍性を持ったんじゃないかと思うんだよ。さらに、そこには渡辺勝の曲、歌詞が入ることが必要だった。それと、『センチメンタル通り』にはあまりアップテンポの曲が入ってないじゃない? 大体1曲目にスローテンポな歌で始まる『塀の上で』をもってくるなんて、普通では考えられない(笑)。3曲目にも『ぼくの倖せ』というバラードが来るし。曲順はみんなで考えたんだけど、無意識に考えていたことを石塚さんがうまく引っ張り出したんじゃないかと思う。

―その『ぼくの倖せ』のかしぶち哲郎さんのヴォーカルヴァージョンも未発表リハ音源集の中で聴くことが出来ますね。

いや、リハ音源ではなく正式録音音源だけど、アルバムヴァージョンとテイクも全く違う。

―もともとは、かしぶちさんと渡辺勝さん、どちらのヴォーカルで行こうとしてたんですか?

そういう話をしていたとは思うけど、詳細は覚えてないなぁ・・・最終的にアルバムでは渡辺勝に歌ってもらうということになったけど。その後、シングルにする時にタイトルも『君と旅行鞄』に変えて、歌詞も私が作ってワーナーから出しているけど、その歌詞は76年以降多分歌われてない。結局、オリジナルがいいんじゃないかということになったんだろうね。集団で作業をしていると、どうしてもディレクターだったりマネージャーだったり、色んな人の考えが入り込むんだよ。それに関してはいまだにそうだけど(笑)。それでいいんだよ。

―あと、そのリハ音源のメンバー同士の会話が興味深かったです。『自由なメロディ』の頭に入っているのはかしぶちさんの声ですよね?

うん、そうだね。

―あとは『ラブ・ソング』の頭でカウントの仕方を注意しているのもかしぶちさんですか?

あれは武川(雅寛)が言っているんだよ。それで武川の曲だって分かったの。

―そうなんですか!

これ誰の曲なんだろうってずーっとみんなで考えていたんだけど、"3、4じゃなくて1、2って言わなきゃ分かんないだろう"って言っているのが武川の声だったので、武川の曲だと。確かに、かしぶちくんの声に似ているね。でも、似ている声でも長年一緒にやってると分かるものなんだ。他人が聞いて分からなくてもね。

―ああいう会話を聞くと、風景を想像出来るんですよね。それこそ、ディランとザ・バンドが「ビッグ・ピンク」の地下でずっと演奏していた、あんな感じでセッションを日々していたのかなって。

それは大げさだね。週に1、2回はスタジオでリハーサルしていた。そこでアレンジを固めたり新曲を持ってきたりしては練って。70年にバンドを結成してから何年も経っているのにアルバムが出なかったというのは、練っても練っても曲が完成しなかったということだよ。しかも、(72年8月に)渡辺勝というソングライターが脱退しちゃうし。それでますます曲ができなくて、なんとか捻り出すためにリハーサルを繰り返していた。大げさに言えばディランとザ・バンドの『ベースメント・テープス』のように。

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