ダルデンヌ兄弟『午後8時の訪問者』は、ポピュリズムに対するアンチテーゼ

By RollingStone Japan 編集部
ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ。(C) Christine Plenus
名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌが描く、"名もなき少女"の死をめぐるヒューマン・サスペンス『午後8時の訪問者』。

『ロゼッタ』『ある子供』でカンヌ国際映画祭パルムドールを2度受賞、また7作品連続でカンヌ国際映画祭コンペティション部門選出という異例の快挙を成し遂げている、ベルギー出身のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟。どんな時代でも精力的に作品を発表し続ける、名実ともに現在の映画界を代表する巨匠である。

ある日の夜、診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに、若き女医のジェニーは応じなかった。その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかり、その少女は診療所のモニターに映っていた少女だったことが判明する。救えたかもしれない命を見過ごしてしまったジェニー。彼女は、「あのときあの扉を開けていたら、少女を救えていたかもしれない」という罪悪感にとらわれ、必死に少女の身元を突き止めようと奔走する。

ダルデンヌ兄弟はこれまでも、少年犯罪、育児放棄、貧困など、深刻な社会問題をベースにしながら、人間の本質に鋭く切り込んできた。本作では、女医ジェニーの葛藤の物語を通じ、人が抱える矛盾、執着心、あるは無関心をジリジリとあぶり出した。


(C) LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv - RTBF (Télévision belge)

—主人公の女医ジェニーを、フランスの若手実力派アデル・エネルが演じています。彼女をキャスティングした理由とは?

リュック:アデルとは、あるレセプションで偶然出会ったんだよ。舞台の上の彼女を見て、とても無垢でイノセントな印象を受けたんだ。彼女の存在自体に信頼が置けるようなイメージが湧いたので、ジェニー役にいいなと思ったんだ。

—アデルは「ダルデンヌ兄弟と仕事ができるなんて夢に思ってなかった」と話していましたが、俳優たちからそのような羨望の眼差しを受けるのはどんな感じなのでしょう?

ジャン=ピエール:ラ・フォンテーヌの寓話『カラスとキツネ』を知っているかい? カラスが美味しいそうなものをクチバシに加えていると、キツネがカラスをおだててその食べ物をクチバシから落とすという話。つまり、その手の話には気をつけないとってことさ(笑)。

冗談はさておき、アデルとはとても良い関係が築けて、とても実りある共同作業ができたよ。芸術的な面でも人間的な面でもね。
Interview by Sahoko Yamazaki (RSJ)

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