a flood of circle佐々木亮介インタヴュー(後編)|21世紀の音楽に必要なのは、境界を飛び越えていく力

By Joe Yokomizo
年始にニューアルバム『NEW TRIBE』をリリースした、a flood of circleのフロントマン佐々木亮介。

―ところで、佐々木さんのその徹底した主義というのは、どこから?

子供の頃から家庭の事情で世界中のいろんなところを転々としていて、自分がどこにも所属していない感じがずっとあったんです。日本に戻ってきてからも一つの地域に長くいたことがなくて、人との関係が薄いまま大人になっていった。でも、どこに行ってもビートルズは通じるんですよね。それからベルギー時代に遊んでいたコロンビアの移民の子はフランス語でドラゴンボールごっこをやっていた。絵でも何でも表現や文化って、国や人種を越えてつながることの出来るもので、今回イギリスからザブが日本に来てくれたこともそうだけど、枠とか線がどんどん増えていく世の中で、飛び越える人はいつも飛び越えている。俺はガキの頃から音楽だけじゃなくて絵でも文章でも映像でも、何かを作ることでそういう飛び越える感覚になればいいなと思っていたことに、改めて気づいたんです。

―芸術や文化が国境を越えるのはその通りだと思うんですが、そこで引っかかるのがインターネットの存在なんです。鴻上尚史さんが自身の戯曲の中で、"インターネットができて、人と人はわかり合えないことがわかった"みたいなことを書いていて。ともすると、ネットがあることで飛び越えようとすることの勢いが削がれるばかりか、新しい分断を生みだしている気さえしています。

確かにつながるためのインターネットがだんだん分断を生み出すものになってきているということはあるかもしれない。だからってネットが悪なのではなく、分断のツールになりつつあるその価値観を逆転できるものが出てこないことが問題なんです。ほんのちょっとしたことで価値観がひっくり返るなんて、幾らでもあるじゃないですか。かつてはロックもそうで、バンドが楽器を弾くのは当然のことだったけど、ビートルズは4人が曲を書いて、見たこともないアメリカの音楽をイギリスのものにした。もちろん今にしてみればビートルズの4人は特別な才能の持ち主だけど、その瞬間は何者でもなかった奴らが集まって"これ面白くない?"って作っただけで、それが世界を変えたわけです。だから俺、バンドにはロマンを感じるんですよね。全然感性の違う奴らが集まった時に、4人の中の誰のものでもない、だけど4人のものでしかない何かが生まれること自体にロマンを感じる。また理想っぽくなってきちゃったけど(笑)、でもバンドは俺にとってそういうことの象徴なんです。

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―それにしてもアルバム『NEW TRIBE』、全曲本当に粒ぞろいですね。

急に話が飛んだ(笑)!

―(笑)。その『NEW TRIBE』はほとんど全ての曲が誰かに向けて書いていると言っていましたが(※前篇参照)、去年10月に他界したBOOM BOOM SATELLITESの川島道行さんに捧げた曲が入っているみたいなことを聞いて・・・。

捧げたというか、川島さんの2人の娘さんのお陰で書けた曲があって。それが『Rock'N'Roll New School』です。まだ本人たちには言ってないですけどね(笑)。

―川島さんとは古くからの付き合い?

正月に川島さんの家に集まる会があって。そこにはイマイ(アキノブ)さんや音楽事務所の方とかがいて、俺、別にBBSとは対バンとかをしていたわけじゃないんだけど、毎年なぜかそこに呼ばれていたんです。最初に行ったのは3年ぐらい前で、病気がまた悪くなって・・・という時だったんですが、いろいろと話を聞かせてくれて。音楽的には全然直系じゃないんですけど、川島さんは器がでかいので俺らの曲を聴いてくれて、その上で、例えばどれだけMP3の音が悪いと言われていても絶対音にこだわることをやめない、みたいな話とかをしてくれて。

―川島さんらしいなぁ。

新宿のゴールデン街で一緒に飲んだこともあるし。音はもちろん大好きで聴いていますけど、川島さんのイズムみたいなものを端々で聞かせてもらって、そういうところも大ファンでした。『Rock'N'Roll New School』は亡くなる前に作った曲で、川島さんに贈るとかそういう内容ではなく、単純に2人の娘さんが希望の存在に見えたんです。俺は子供もいないし結婚もしていないけど、あの2人を見ていろいろと思うことがあって。もちろん、川島さんから聞いた話も混ざっています。それにしても川島さんって信じられないくらいすごくタフに立ち向かった人でしたよね。

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