使命に生き、今を受け入れる。KEMURI伊藤ふみおのパンク精神

By TAKURO UENO
PHOTO:TERUMI FUKANO

世界中にある素晴らしい景色、その破片を集めてくる

─アルバム収録曲だと「RAINDROP」がとても好きなんですが、疾走感と力強さがあるのに、力みが一切ないというか、すごく自然なスタイルでカッコよくスカパンクを鳴らしている。このクオリティはKEMURIならではのものだと思いました。

伊藤:この曲はギターのT(田中’T’幸彦)が作ったんだけど、Tはもともと初期メンバーでファーストの『Little Playmate』をリリースして、セカンドの『77 Days』を出した後のUSツアーに行く直前に辞めた人なのね。その後は、南(英紀:現Ken Yokoyama Band)がバンドに加入して活動を続けてきたから、再結成してまたTがバンドに戻ることになった時、プレッシャーが結構あったらしいんだよ。でも、そんな中でもギターを弾き続けて、いい曲を作ろうと頑張ってきた。だから「RAINDROP」のデモを聴いた時、すぐにTに電話して「この曲めちゃくちゃいいから、絶対に形にしたほうがいいと思う」って伝えたんです。

─そしてまた「このメロディにこの歌詞が乗るのか!」っていう心憎いアプローチ。まるでミュージカルを見ているかのようなロマンチックな感じがあるなと。

伊藤:すごく美しいんだけど、ちょっと切ないでしょ。メロディそのものが泉、井戸みたいなもので、そこからインスパイアされて自分の中にある情景を置いていくみたいな。

─「THUMBS UP!」「My Best Friend」「SHOUT」といったPMAを感じるメッセージ性の強いナンバーにも奮い立たされるものがあるけど、「RAINDROP」「CHOCOLATE」「DIAMOND」のような情景が目に浮かぶ曲っていうのも、ふみおさんの歌詞の特徴ですよね。

伊藤:「RAINDROP」も実際に見た景色がベースになっているし、イギリスツアーに行った時、川のほとりに佇んでる女の子がいて、その光景を歌詞にしたのが「DIAMOND」ですからね。そう考えると歌詞は全部ノンフィクションなんですよ。実際にこの世界にある景色を切り取ったものだから。古今東西、世界中に素晴らしい景色があって、その破片を集めてくるような――。そういう感覚も自分がこのアルバムで表現したかったことの一つなんだよね。高揚ばかりじゃないというか。

─さっきツアー中にスマホで写真を撮るって話してくれましたが、自分が見た景色っていうのは結構覚えてるものですか?歌詞を書く時にパッと浮かんできたりとか。

伊藤:そう、これが不思議なもので、実際にあるんですよ。「RAINDROP」もいい曲にしたいって思いが強すぎたのかもしれなくて、なかなか歌詞ができなかった。そんな時、スタジオで皆がまだ寝ている中、早起きしてコーヒー飲みながらスタジオの片隅でノートパソコンを開いた瞬間、パッと浮かんだんだよね。その情景が。

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