使命に生き、今を受け入れる。KEMURI伊藤ふみおのパンク精神

By TAKURO UENO
PHOTO:TERUMI FUKANO

「頑張って夢を叶えるぞ!」からの変化の背景

─パンクって攻撃的で刹那的な一面もありますが、例えばKEMURIの音楽を昔聴いていたファンが子供を連れてまたライブに足を運んでくれたりとか、ずっと変わらずに仲間を大切に思う気持ちとか、継続性みたいなのも大切な要素ですよね。続けているだけで意味が生まれるというか。

伊藤:ねえ。20年前には考えたことなかったけどね。事実、ほんと初期のKEMURIのライブに毎回来てたファン同士が結婚して子供も誕生して、その人たちとは家族ぐるみで未だに付き合いがあったりするし、そんなことあるんだなと自分でも驚きますよ。今回のアルバム『FREEDOMOSH』はディセンデンツのビル・スティーヴンソンのスタジオで制作したんだけど、その時にビルが「なあフミオ、バンドっていうのは不思議なもんだよ。結成してから30年以上経つのに、周りからはよく働くなって笑われるくらい今もアルバムを作っているし、南米ツアーに行ったら大歓迎されるんだから」って話してくれて。「自分たちでは想像もしなかったことが起こるんだ」と。我々も前から南米に行きたいとは思ってたけど、なかなか実現していない。だから、そういう話を聞くと本当に南米に行けるかもしれないし、もしかしたら行けないままかもしれない。どっちに転ぶか分からないんだったら、実現できるように頑張るしかないじゃんってことなんだけど。


PHOTO:TERUMI FUKANO

で、そういった話から生まれたフィーリングがアルバムの歌詞のベースにはあるんです。前は違って、絶対に何があっても頑張って夢を叶えるぞ!って感じだったのに、こうなったのは加齢なのか何なのか分からないけど、でも自分たちにとってはすごく説得力がある変化だなと思う。それを受け入れているからこそ、新しいアルバムのサウンドにも言葉にもすごく深みがある。男なんて仕事でもそうじゃないですか。ほとんどの人が使命感のようなものを持っているわけだけど、その中から生まれてきた、使い古された言い方をすると等身大の自分というやつが、そのうち自然と形になってくる。だから説得力のあるものになるんだろうし、自分たちのアルバムもそういう感じだと思うな。

─なるほど。

伊藤:フェスとかでいろんなバンドを見てると、若いってそれだけでカッコいいんだなって思うことばかりだよ。ただ、KEMURIを大好きで応援してくれる人の熱量――我々の熱が彼らを熱くさせるのか、彼らの熱が我々を熱くさせるのか、どっちが先なのかは分からないけど――そういうのも含めて「まだまだ負けねえぜ、やってやるぞ」っていう風に、決着をつけずにもがき続ける。それがあるから、今のKEMURIはすごくカッコいいと思う。ファースト・アルバム出して今年で20年ですからね。解散を経て辿り着いたのが今回のアルバムということで、これが我々にできることの一つだったんだってすごく強く感じます。

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