黒猫チェルシーのロック観:「ロックバンド=教室の片隅にいるヤツではなく、中心的存在であるべき」

By RollingStone Japan 編集部
黒猫チェルシーのロック観:「ロックバンド=教室の片隅にいるヤツではなく、中心的存在であるべき」
結成から10年を経て、黒猫チェルシーに起きた変化とは?ニューアルバム『LIFE IS A MIRACLE』と音楽性の変化をメンバーが語る。

2月22日(猫の日)に最新アルバム『LIFE IS A MIRACLE』をリリースした黒猫チェルシーは、最近では珍しく、時代を問わないストレートなロックを聴かせてくれる実力派バンドだ。
しかし、最初からそういうバンドだったかというと、そうではない。実は数年前はまったく違ったイメージのパンクロックバンドだった。結成から10年、一体どのような変化が彼らに訪れ、今作へと繋がっていったのか。黒猫チェルシーの音楽性の深部を知ることで、その経緯を探っていく。

-今回のアルバムを聴かせてもらって感じたのは、黒猫チェルシーがやっているロックって同年代のバンドにはめずらしい、ストレートなものですよね。グランジ以前・以降と言われたりしますが、グランジロックが流行する以前=昭和のバンドは言いたいことを熱く叫ぶのが美徳だったのに対して、以降=平成は病んだ感じの音楽というか、言いたいことを比喩で隠した音楽が主流になった。そういう意味では、黒猫チェルシーの音楽は昭和の匂いがするなと。

澤 竜次(以下 澤):そもそも、それってどうして流行ったんでしょうね。

-心を病んだ人とか、社会的弱者と呼ばれる人が世の中に多くなったんだと思います、単純に。

澤:ああ、なるほど。

-そういう人たちを癒したり、代弁したりするようなポジションってことです。それに対して黒猫チェルシーの音楽はどうですか?

澤:そういう音楽をやっていた時期もあったけど、今は逆ですね。そういう精神的なことよりも音で勝負したいし、自分たちが好きで信じている音楽、影響を受けてきたロックバンドのカッコいいなと思うところを同世代や次の世代に伝えていきたいんです。自分たちが死んだ後も音は残るわけで、それを考えたら、自分が素直に好きだと思うものをやっていきたいと思うようになりました。

渡辺大知(以下 渡辺):そういうバンドが最近いないのは寂しくもあるんですよ。ストレートが照れ臭いというのも分かるんですけど、自分の好きなものから逃げないというか、そこをちゃんと目指すバンドでありたいんです。

-逃げというのは?

渡辺:例えば"ヘタウマ"的なものが流行る風潮とか。下手だけどいいと思えるものはあるけど、決して下手だからいいということはない。飯でいうとちゃんと美味いもの食いたいみたいな。逆に美味いとかじゃなくて・・・

澤:逆に美味いってどういうこと(笑)?

渡辺:味はそこそこだけど店の雰囲気がいいみたいなのじゃなくて、ちゃんと味で勝負したいということ。例えば今回の収録曲で言うと『グッバイ』とか『海沿いの街』とか、メロディアスなバラードをちゃんとロックバンドとして演奏できるっていう、そこは1つの武器にしていきたいなと思いますね。

宮田 岳(以下 宮田):これは昔から思っていたことなんですけど、ちょっと自虐するような感じが今若い世代に受けていると思うんですよ。漫画で言うと浅野いにお的な、ナヨっとした主人公が自分を貶す感じ。それもいいけど、それよりも僕らとしては普遍的なものを表現していきたいんです。例えば『タッチ』のタッちゃんと南の関係性って、大昔から変わらない感情で成り立っているじゃないですか。死にたくないから頑張るとか、あの女の子のために頑張るとか。そういう気持ちって人間が文化を形成していくうえでずっと変わらないものだと思うので、そういうのをやっていきたい。

澤:あくまで日本の中での話だけど、ロックバンドって90年代とかまではシーンのど真ん中に普通にいたのに、だんだんヒップホップやダンスミュージックに淘汰されて、その中でロックバンドたちは斜に構えるしかなくなってしまったんだと思うんです。今までは真ん中にいる主人公だったはずなのに、どんどん端に追いやられていった。そうやって居場所がなくなったから真ん中じゃないところを攻めざるをえなくなったというか。それで出来上がってきたのが病んだ感じの音楽なのかもしれないけど、そうはありたくないって思うんです。クラスの席の一番後ろの端っこにいる、ヤンキーでもなければ真面目でもない中途半端な人間=ロックバンドみたいな、そういう位置が嫌なんですよね。だから、もう1回ロックバンドってカッコいいよねというところに自分らが持っていきたい。だからこそ、堂々とバラードとか歌モノとか、いわゆる"いい曲"を揺るがずにやっていくんです。ここにいたら目立つかもとか、こっちから石投げたら振り向いてくれるかもとかじゃなくて、ただ堂々と真ん中にいればいいというか。そうすれば、自然とそこが中心になっていくと思うので。個人的にはシューゲイザーだったりアンダーグラウンドなものも好きなんですけどね。あくまでバンドとしての話。

-岡本さんはどうですか?

岡本啓佑(以下 岡本):僕の曲がアルバムに収録されるのはこのバンドでは今回が初なので、自分の中でどういう感覚で、どういう気持ちで曲を作ればいいのかというのをずっと考えていたんです。そうしたら、ある時渡辺が"一生歌える曲を作りたい"みたいなことを言っていて。それが僕の中でひとつの指針になったんですよね。そもそも歌を作るってそういうことなのかもしれないけど、僕にはちょっとそこが抜けていたので。
Text by Rika Suzuki

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