『ホンマでっか!?TV』の武田邦彦、濃縮ウランの研究者から"反原発"になった理由

By Joe Yokomizo 2017/月号 P106〜107 |
福島第一原発にて、防護服を着て清掃等を行う作業員(Photo by Pallava Bagla/Corbis via Getty Images)

―では、福一の事故の健康への影響をどんな風に捉えていますか?ここにも嘘が潜んでいるんだとは思いますが......。

事故に関しては2号機が爆発しなかったので、軽度で済みましたが、放出した放射性物質がすごく多い。広島原爆とよく対比されますが、僕は200倍と言っています。量にして100京ベクレルです。これは、頭の上に降ってきたら日本人全員が16回死ぬ量です。不幸中の幸いだったのが、福島原発は太平洋側にあったということです。そしてあの時、西風だったから9割は海のほうへ行った。あれが新潟の原発だったら大変なことになっていたと思います。

―ええ。健康への影響はどんなふうに?

放射線の被ばくによる害は、主に2つあります。致命的ガンと重篤な遺伝性疾患。遺伝性疾患です。ガンの場合、潜伏期間が5年から20年なので、今の段階ではわからないのが当たり前なんです。ああいう事故では、即死しませんから。ガンの場合、潜伏期間20年だと5歳で被ばくしたら、25歳くらいからガンが出る。チェルノブイリでは随分そうした事例がありました。

―福島でも小児甲状腺がんは既に増えていると言われていますが、その実態は?

小児甲状腺がんの発生率は普通10万人に3人くらいですが、今の福島では10万人で150人を超している。発症率で言えば通常の50倍くらいです。と、ここまでは言えますが、まだ潜伏期間を過ぎてないので、あとはわからないんです。今わかっていることは一つしかない。国立がん研究センターの見解によれば、原発事故前の被ばくの限度=1年1ミリシーベルトの被ばくで交通事故と死亡数がほとんど同じ、数で言うと10万人あたり6.6人が死ぬということです。


Photo by Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

―ということは、年間100~250ミリシーベルトの基準で働く福島の原発作業員は、被ばくの影響が出る可能性は高いと?

ええ。実際にけっこう亡くなっているのではないかと思います。被ばく線量に比例して影響が出ますからね。1年1ミリシーベルトだったら交通事故くらい。100ミリシーベルトならその100倍か、成人男子だったらそれを5で割るくらいになります。しかも作業員は防護服を着ていると言いますが、あれは何も防護していません。放射線は鉛じゃないと防護できないのに、彼らが着ている防護服はペラペラのプラスチック製なんですから。放射能を含んだ粉が付かないようにする"チリ付着防止服"でしかないんですよ。放射性物質を付けて家の中へ入ることは防いではいますが、それ以上の意味はありません。

―武田さんは、原発再稼働にも反対していますよね?

地震のある所で原発は動かせないに決まっているんです。なのに嘘をついて動かしていた。その嘘をはずしたら、誰も動かしたくないというのが本音です。震度6以上の地震が来る可能性があるような場所で原発を作っているのは、世界で日本と台湾だけです。台湾は日本の真似をしてやっているけれど、2025年までに全廃することが決まっています。それが当然の判断です。

―ただ、廃炉にするにも、その方法すら見つかっていないわけですよね。

廃炉のやり方は簡単です。燃料棒は、取り出して地下300メートルに埋めればいいんです。原子炉も放射能で汚れているから、そのまま穴を掘って土の中に埋めてしまえば終わりです。まぁ100年も置いておけば、地上で野菜でも何でも植えられるようになりますよ。100年、その土地が使えなくなるのは仕方がない。そういう性質のものなんですから。でも、諦めがつかないのか、"核燃料しまう所がない"ってグズグズ言って、いちばん危ない状態で地上に置いてあるんですから。

―では今年(2016年)、その行方が話題になった高速増殖炉もんじゅは?

もちろんやる必要なんてまったくないです。あれは完全にお金の問題でしかないので。原子力の国家予算って約4000億だったんです。今、僕は委員会から離れたから確かなことは言えないけれど、今でも同じくらいのはずです。で、その4000億円のうちの2400億円を研究開発に出しているんですよ。僕が委員会にいた当時、"安全関係にもっと金を使え"と言ったんです。そうしないと事故が起こるから。でも、ほかの委員会の人たちは"安全関係に金を使ったら事故が起こる可能性を認めることになる!"と言っていました。完全にヤクザの理論ですよね。原発の危険を認めることになるから、安全対策には金は使わない。開発あるのみ。その悪しき慣習のひとつが、もんじゅなわけです。

―そして、その原発は日本が核武装する可能性を示唆したものであり、原発というかたちであれ核を保有することが他国からの攻撃の抑止力になっているという理論も原発推進派にはありますが、武田さんはそこも否定していますよね。

核はいらないです。今の時代で日本に核攻撃してくる国なんてありませんから。僕は思想的には右翼で、靖国神社の講演会の最高人数記録を持っているような人間なんです。だけど、僕は今の憲法を支持しています。今の憲法には自衛をしちゃダメだとは書いてないわけだから、自衛はすればいいんです。それで、世界各国が全部自衛したら戦争は起こらないですからね。そもそも、万が一他国が攻撃してきたとしても、日本はもう少し軍事予算を増やせば迎撃できる技術は十分備えられますから。だから、日本が核武装する必要はないいと思っています。

ローリングストーン日本版2017年WINTTER版掲載


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KUNIHIKO TAKEDA
武田邦彦 1943年東京都生まれ。工学博士。1966年、東京大学教養学部基礎科学科を卒業後、旭化成工業に入社。旭化成工業ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学工学部教授、名古屋大学大学院教授を経て、現在は中部大学総合工学研究所特任教授。内閣府原子力委員会および安全委員会の専門委員、文部科学省科学技術審議会専門委員を歴任。レギュラー番組に『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)など、近著に『原発と日本の核武装』、(詩想社)『エコと健康の情報は間違いがいっぱい!』(廣済堂出版)などがある。
http://takedanet.com/



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