WWEの未来を担う大スター候補、バロン・コービンとは何者か

By Luis Paez-Pumar
WWE最大級のスターになるべく道を歩んでいるバロン・コービン。(WWE)
バロン・コービンは、瞬く間にWWEの中心的存在になりつつある。長身なのに俊敏。口を開けば暴言を吐く。そしてジョン・シナにも動じない。この一匹狼は「本物」だ。

元アリゾナ・カーディナルスのオフェンシブラインマンという経歴を持つコービン。時間をかけて売り出しを練ったWWEは2014年にコービンをNXTで再デビューさせた。しかしスキルに乏しいマイクパフォーマンスと試合運び、無個性ぶりで批判にさらされた。当時は彼が2年を過ごした育成部門時代だったので批判されても仕方なかった。しかしレッスルマニア32で行われたアンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤルで優勝をさらうと、批判はさらに高まった。あまりに大勢のレスラーが時期尚早のビッグプッシュ(看板スターに据えるために売り出すこと)をかけられ、未熟なまま売り出された者のほとんどが成功を収めるどころかキャリアを棒に振り、インディ団体の試合に出られるだけでも幸運だといわれている現状もある。

それでもコービンは批判にめげず毎晩頑張ってきた。あれから1年を経た今、スマックダウンのローンウルフ(彼のニックネームで一匹狼を意味する)になった彼を批判するのは、日ごとに難しくなるばかりだ。コービンの成長は誰の目から見ても明らかで、これから人気が上がるのを待つだけだからだ。

コービンが成長ぶりを見せる絶好の機会になったのが、火曜夜の番組スマックダウンで行われた、ジョン・シナと対戦したメイン戦だ。この試合は(リアリティショーの撮影に参加していたため)パートタイマーと揶揄されたジョン・シナが、WWEに復帰して初めて出場した試合だった。コービンは負けたが、その試合ではWWEのブランドが分けられて以降、コービンにスポットライトが当てられ続けてきた理由が示された。コービンは試合中に実況席で見ていたAJスタイルズをののしり侮辱することで、シナと敵対するヒール役スタイルズの助けすら不要だと主張し、彼が持つキャラクターを完璧に描写してのけた。そしてスマックダウンに属する誰よりも多く世界王座戦で勝ってきたシナとメイン戦で立派に渡り合い、スマックダウン期待の星であることも印象づけた。この試合が行われる前の2016年12月ではスタイルズ、ドルフ・ジグラーと素晴らしい三つ巴戦を見せて進歩を強烈にアピールした。


スマックダウンでジョン・シナを痛めつけるコービン。(WWE)

我々はいつからコービンに引かれるようになったのだろう?10秒で試合を終わらせて(観客は退屈のあまり、試合開始から終了までカウントを数えて野次るほどだった)ひんしゅくを買っていたNXT時代のコービンが、どうやって今のWWEで最も有望な若手に化けたのだろうか?

それを知るにはNXT特番テイクオーバー・ブルックリン大会にさかのぼらねばならない。この大会では相手サモア・ジョーが試合を牽引してコービンの台頭を印象づけたことで、コービンの試合で初めて「グッドマッチ(名勝負)」と呼べる内容になった。そして試合中のコービンに初めて余裕が感じられた試合がNXTテイクオーバー・ロンドン大会で行われた対アポロ・クルーズ戦だった。

「ゴー・バック・トゥ・リング・オブ・オナー(ROHへ帰れ)!」

この6文字から成る暴言は、挑戦的な言動を好んで行うコービンが試合中にリングから落ちたクルーズへ向かって吐き捨てた一言だ。しかしクルーズはROHで試合をした経験は1度もなかった。コービンが狙って叫んだのか、本当に勘違いしたのかはともかく、この一言はレスリングファンや専門家が交流するインターネット・レスリング・コミュニティ(IWC)と呼ばれる場ですぐ話題になった。今のコービンにはプロモと呼ばれる、リングでマイクを通して語る時のスキルに欠けているのは明らかだが、よりによってプロモ中のマイクパフォーマンスよりも、試合中に相手へ浴びせた一言で注目を集める結果になった。マイクを持った時のコービンはまだまだぎこちない。それでも試合中では硬さが取れ、機転を効かせる余裕も出てきた。彼が秘めてきたこれらの可能性がスマックダウンでようやく結実しそうな兆しを見せている。

前述した対シナ戦の内容は良かった。しかし観客をうならせるまでに至らなかった。しかし彼はもっと大切な何かを示したかもしれない。それは彼がスマックダウンの根幹を成す貴重な1人になれる可能性だ。フットボール選手からレスラーへ転向した1人だからといって、毎試合の内容を観客や視聴者に批評される必要はない。見上げるような身の丈を誇るツワモノとして、試合運びに長けるパフォーマーを支える役割をこなしさえすればいい。それに彼は観客が思わず声を上げずにいられなくなる3つの要素(リングの中から外へ、またその逆への移動を素早くこなせる敏捷性。試合中に相手をののしれる能力。WWEで見られる技で最も派手に見える彼の持ち技ディープ・シックス)を持っている。試合のペース配分を今よりもうまくつかむと同時に技の引き出しを増やせば、遅かれ早かれトップ集団に食い込むだろう。WWEのインターネット番組で配信されている「トーキング・スマック」での出演を見た限り、本来語り上手なコービンに必要なのは、プロモの中で個性をアピールして開花するためのきっかけだけだ。そのきっかけをつかんでしまえば、このモンスター級ヒールは今後数年以内にメイン戦を飾るだろう。そしてその時、アンチ・コービン派は「エンド・オブ・デイズ(コービンのフィニッシュ技の名で、破滅の日を意味する)」を迎えるだろう。


Translation by Mie Arimoto

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