SUGIZOが語る、憤り・嘆き・絶望:"怒れる電子音楽"が示唆する闇と光

By RollingStone Japan 編集部 2017/月号 P48〜53 |
Photograph by Yoshika Horita
SUGIZOの5年ぶりのオリジナル・アルバム『音』が完成した。自身の中に溜まっていったネガティヴィティを思いきり解き放ったという今作が、世の中に警告するものとは何なのか。本誌へ語ったロングインタヴューを掲載する。

2016年8月から3カ月連続でリリースされた、デジタルシングル『Life On Mars?』『Lux Aeterna』『Raummusik』というトリロジーの集大成として、ついに5年ぶりのオリジナル・アルバム『音』が完成した。腐敗していく社会への憤り、嘆き、絶望......自身の中に溜まっていったネガティヴィティを思いきり解き放ったという今作が、世の中に警告するものとは何なのだろうか。SUGIZOの言葉から、その闇の正体を探っていく。

―今回のアルバム『音』を作るきっかけとなったのは、ご自身の中に溜まっていた闇やドロドロした汚いものだったそうですね。

よくも悪くも社会のうねりの影響を受けてしまうんですよ。主に憤り、悲しみ、絶望というものなんですけど、感覚がすごく敏感になっているので、世の中で起きていることを精妙に感じ取ってしまって。そうすると、自分の中で多くの感情が消化しきれなくなって溜まっていく。それを何とか跳ね除けようとなるべくポジティヴに変換して、世界中で起きているいろんな問題は本当に我々が光を掴むための陣痛なんだ、と信じるようにしているんですけどね。

―そうでも思わないとやっていられない?

やっていられない。本来は明るく生きてハッピーになりたいし、安堵感を感じたいけど、その反面"全部なくなってしまえ"と思う自分もいる。ここまで来たら一度世の中が壊れなきゃダメだ、と。もっと大きな話で言えば、人間そのものが地球にとっての癌細胞なら人類は滅びなきゃいけないとか。極論ですけどね。トランプも僕としては実はすごく好意的で、彼が大統領になったことでアメリカがぶっ壊れるならそっちのほうがいいと思っている。アメリカは建国以来ずっとお金を生むための戦争ばかりしていますよね。

―軍需産業の国ですもんね。

それがビジネスですからね。でも、そういうアメリカという国の成り立ちから、すでに地球はボタンを掛け違えてしまっていると思うんです。もしアメリカが壊れたらおそらく日本にも被害があるだろうけど、本来我々が求めている自由、真の独立ということを考えると、やっぱりアメリカの保護下にあるのは違うでしょ、と。そういうこと考え出したら自分の中のネガティヴが抑えきれなくなって、これはもう音楽にしないと潰れちゃうと思ったんです。

―今年(2016年)『シン・ゴジラ』という映画がヒットしましたけど、あれって日本はもうグレート・リセットがないと変わることが出来ないことを示唆している作品だとも思うんです。そういった意味で、今回のSUGIZOさんのアルバムも示唆に富んでいる作品だと思いました。

ありがとうございます。これは僕の世の中に対する警告なんですけど、わかりやすい言葉は敢えて入れていません。結局僕はジョン・レノンやボブ・ディランのようにプロテストソングを歌う役目ではないんですよね。10年前はそれをやりたかったけど、どう足掻いてもああいう言葉は僕の音楽の中では生まれないし、歌えない。じゃあ自分にできることは何かと考えたら、曲を作ること、演奏すること、サウンドを極めることだったんです。自分の精神性や社会に対するメッセージ、嘆きを音に転写できるはずだと。

―近年は特にいろんな事件や事故が起きていますが、具体的に何がSUGIZOさんの中で刺さったのでしょうか?

もっとも大きいのは原発、核の問題です。もう1つは難民問題。あとはもっと日本的なもので言うと選挙の投票率の悪さ。そういう世の中を放棄している人たちに対する憤りというのもあるし、例えば『Lux Aeterna』に関しては、この曲を書き始めた時からなぜか旧ソ連時代、冷戦時代の共産主義の当局の圧政に苦しむ民衆の怒りとか、そこから蜂起してくるエネルギーといったイメージがあって。また、別の曲で言うと通常盤の最後に収録されている『The Voyage Home』は故郷へ帰り着く旅をずっとしているイメージなんですけど、今年ヨルダンのシリア難民キャンプに訪れた体験から生まれた曲で。難民、人権の問題と圧政というのは繋がるものがあって、大多数の弱き人たちと世の中を牛耳っているような超富豪の間の格差が著しく巨大化していっている現状は、昔の圧政や貴族社会と何も変わらないと思うんです。虐げられて生きている、本来すべての人が持っているはずの人権もまともに与えてもらえず、認められずに生きている人たちの声が自分の中にすごく入ってきてしまう。
Interview by Joe Yokomizo, Text by Rika Suzuki(RSJ), Styling by BUN, Hair & Make-up by Hisako Araki(Octbre)

TOPICS

RECOMMENDED

TREND