ホリエアツシ インタヴュー前編:バンド"ストレイテナー"とソロプロジェクト"ent"の相違性

By Joe Yokomizo
ソロプロジェクト"ent"として、1月11日に5年ぶりの3rdアルバム『ELEMENT』をリリースするホリエアツシ

―確かにここ数年で"ポスト・ロック"ですら行き着いてしまったというか、みんな同じような音になっちゃって、何を聴いてもドキドキしなくなっていました。そこで、ボン・イヴェールの最新作『22, A Million』がその閉塞感を完全に破った感じがありましたね。

僕もここ最近ではボン・イヴェールの新譜が一番ガツンときました。あまりにすごくて、ちょっと笑っちゃったくらい。

―じゃあ、今作はポストロックはまだまだいけるという感触の中で作られたものということでしょうか?

そうですね。そこに感心しつつ、取り入れられる部分は取り入れて、ミニマルなんだけど深い世界みたいなものにちょっとトライしていこうかなと。2ndアルバムは結構音数が多かったんですよ。音楽的にはなだらかなんだけど、自分の中ではバッキバキだった(笑)。今となっては再現できないくらいたくさんの音色とフレーズで構成されていて(笑)、今回はちゃんと楽器の置き位置とかを考えながら、オーケストラルな音にはしようとせずシンプルなサウンドを目指して、歌を聴かせる曲ではちゃんと言葉を聴かせるといったことを意識して作ったんです。なので、2ndよりも1stに戻ったような感じです。1stはシステムや機材もソフトシンセはあんまり使わず、ほぼアナログで作ったんですけど、そういうところに戻ろうかなと思って。

―でも、音の洪水みたいな今の時代にこういうシンプルな音で表現して伝えるのってすごい難しくないですか? 特にマーケット的には正直なところ、難しい気がしてしまいます。

どうなんですかねぇ。もはやentに関しては、自分が気持ちいい音というだけなんですよ。もちろん外向きに作ってはいるんですけど、ここまできたら新しさへの挑戦みたいなことではなく、むしろ自分にとってのエヴァーグリーンなものでありたいと思っているので。

―それは、音楽の領域でもはや新しい表現はあまりないという諦めにも近い感情がそうさせるとか?

いや、そんなことはないんですけどね。使ったことのない楽器ですらいろいろあるわけで。自分の扉を完全に開かず、外から受け入れていないというだけで、外から受け入れたらまだまだいろんな可能性があるだろうなとは思いますよ。ただ、entはかなり個人的なプロジェクトなんで、バンドもやりつつここで1枚出して、新しい風が入ってきたらいいなというか、やってまっせ感をアピールしたいなと(笑)。

―(笑)。でも、意地悪な見方をすると、自分の自我を追求するソロと、集団を重んじるバンドの両方あると、引き裂かれるような想いになりません?

いやいや、そんなことはないです(笑)。自分の感情や本音の部分はストレイテナーできちんと表現できているので、entではアーティストとして表現したい音よりも。一音楽リスナーとして、自分が聴きたい音、つまり一番ピュアな部分をカタチにしています。しかも、ストレイテナーって僕がこういうことを全力でやろうとしても誰も文句言わないんですよね(笑)。むしろメンバーもentのことをすごい好きと言ってくれるから出来るというのもあるし。もちろん僕自身もエネルギッシュに、ステージに立って音を鳴らしていくバンドサウンドが大好きだし。それに、引き裂かれるほどの成功もしていないですよ。

―それで言ったらホリエさんズルくないですか? だって音楽活動においてストレスないってことでしょ?

はっはっは(笑)!! まあ、ストレスは自分に課すハードルだけですね。自分が理想としているものに対して思うように音や言葉が出せない時はストレスに感じますが、それは自分で自分に課しているだけで、誰から何を言われるとか批判されるわけでもないので、ストレスがないと言えば確かにないです。ただ、こういうポストロック的な音楽がもっと日本のマーケットにも広がっていったら、もっといろんなアーティスト、ジャンルに火がついていくんじゃないかな、というじれったさというか、願望みたいものはあります。

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