ワム!『ラスト・クリスマス』が定番クリスマスソングになるまで

By Maura Johnston
MTV全盛時代を過ぎてからも、ワム!の『ラスト・クリスマス』は、定番クリスマスソングとして愛され続ける (Photo by Michael Putland/Getty Images)

『ラスト・クリスマス』は、クリスマスシーズンの感傷的なムードと、季節を問わない失恋の痛手をうまく組み合わせたその手法から、あらゆるジャンルのアーティストがカバーする人気のクリスマスソングとなったのだ。エモーショナル・ロックの旗手、ジミー・イート・ワールド、着メロ会社のキャラクター、クレイジー・フロッグ、扇動的な英ロックバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズ、世界制覇する前のテイラー・スウィフト等だ。楽曲としての個性を出すために、オリジナル曲をアレンジすることを認められたアーティストもいる。昨年発表されたカーリー・レイ・ジェプセンによるカバーは、この曲に歌われている悲しい恋心を最大限に押し出しており、2013年のアリアナ・グランデによるカバーでは、「Boy, you blew it(やってくれるよね)」、「How could you do it?(どういうことなの?)」というような愚痴が歌詞に加えられている。ポスト・ポップバンド、ザ・エックス・エックスは、シンセサイザーの薄い音や震えるギターの音色でロミー・マドリー・クロフトの歌声を引き立たせ、寒々とした雰囲気に仕上げている。

『ラスト・クリスマス』が1984年にリリースされた時、ヒット曲が乱立していたイギリスのランキングにおいて、ロック・ポップ界のスーパースターが結成した慈善プロジェクト、バンド・エイドが歌った『Do They Know It’s Christmas?/ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?』にクリスマスソングのトップの座を奪われた(マイケルはこの曲のオープニング部分に登場し、第2フレーズを歌っている)。とはいえ、『ラスト・クリスマス』が持つメッセージ、つまり"クリスマスシーズンのロマンチックな悲哀"が、驚くほどの持続力を持っていることは証明済みだ。昨年のクリスマス当日、マイケルが53歳でこの世を去る前に発表されたBillboard(ビルボード)の最新クリスマスソングランキングTOP100において、ワム!の『ラスト・クリスマス』は、ジーン・オートリーの『赤鼻のトナカイ』と、プログレの枠を飛び超えたトランス・シベリアン・オーケストラの『Christmas Eve (Sarajevo 12/24)」/クリスマスイヴ(サラエボ12/24)』に挟まれ、11位につけた。だが、ビルボードが伝えていないクリスマスソングランキングが、まだあるに違いない。音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)で、マイケルの訃報が伝えられてから『ラスト・クリスマス』の再生回数が急増したのだ。何かしらのランキングで急浮上しているはずだ。

『ラスト・クリスマス』の売上げ目標を語った1984年のスマッシュ・ヒッツ誌のインタヴューにおいて、マイケルは、ある曲がポップ界の不朽の名作となる基準についても言及している。「偉大なポップソングというのは、何百万という人々にアピールする何かを持っているんだ。そのための手段は様々だよ。ブラック・レース(イギリスのポップバンド)の『Agadoo/アガドゥー』(愉快なパイナップルの歌)のような、"どうしようもない"やり方もある。僕たちがやっているような"気持ちをアゲる"という方法もあるんだ。」憂い悩める『ラスト・クリスマス』は、"アガる"ための回り道と言えるかもしれないが、マイケルが掲げた厳格な"ポップ界の不朽の名作となる基準"を達成したことは間違いない。


Translation by Kyoko Kawamae

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