ワム!『ラスト・クリスマス』が定番クリスマスソングになるまで

By Maura Johnston
MTV全盛時代を過ぎてからも、ワム!の『ラスト・クリスマス』は、定番クリスマスソングとして愛され続ける (Photo by Michael Putland/Getty Images)
ポップミュージックのヒット曲を目指したジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーだったが、1984年に発表したこのクリスマスソングは不朽の名作となった。

ぺット・ショップ・ボーイズを結成する前の1984年の春、ニール・テナントは音楽ジャーナリストとしてマイアミを訪れ、ワム!の2人を取材していた。眩しい日差しと濃い影がコントラストを描くホテルの一室で行われていたロケの休憩を狙い(実は、大ヒット曲『ケアレス・ウィスパー』のビデオを撮影していたのだが)、所属レーベル移転後初となる、1983年にリリースされたアルバム『ファンタスティック』収録後、発売前の準備に追われていたジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーに、テナントはインタヴューを行っている。

この中で、リッジリーは、既にクリスマス向けのシングル曲が出来上がっていると話しており(別のインタヴューによると、マイケルは2月に曲を書き上げていた)、「ゾクゾクするような曲」だとしている。その数か月後、優しいメロディーの切ないクリスマスソング『ラスト・クリスマス』が発売となる。ワム!の2人はこの曲に大きな期待を寄せていた。その数か月後、マイケルは、「アーティストとして、できるだけ多くの人に聴いて欲しい。僕たちのクリスマスソング、『ラスト・クリスマス』の売上げ目標は150万枚だよ」と、イギリスの雑誌、スマッシュ・ヒッツに対し語っている。

そして『ラスト・クリスマス』は、マイケルの予想を遥かに超え、今年までに母国イギリスで180万枚、アメリカでは75万枚以上売り上げている。しかしこの曲のインパクトはその数字を上回るものがある。『ラスト・クリスマス』はMTV全盛時代を過ぎてからも、クリスマスソングとして最も人気のある曲に挙げられている。この曲を凌ぐ定番となっているのは、フィル・スペクターを踏襲したマライア・キャリーの『恋人たちのクリスマス』だけだ。

『ラスト・クリスマス』を、繰り返し聴いたヒット時代から随分経った今でも新鮮に感じる。ダーリン・ラヴが明るい曲調で心の憂いを歌ったクリスマスソングの古典、『クリスマス(ベイビー・プリーズ・カム・ホーム)』 と同様に、クリスマスシーズンに掻き立てられる切ない気持ちを前面に押し出している。クリスマスシーズンだからこそ、失恋がより一層辛く感じる。軽いキーボードのリズムが一面の雪を思い起こさせる。曲の中に散りばめられた鈴の音は、亡き人たちへの哀悼の意を込めた神聖なイメージを醸し出している。そして「well, it’s been a year – it doesn’t surprise me (ああ、もう1年だね-僕は驚かないよ)」という"あきらめ"のフレーズから始まり、クライマックスに向かうにつれ、"嘆き"を伸びやかに歌い上げるマイケルの声は、ワム!の米国進出時に磨いた本格的なソウル・ミュージックの才能を見せつけている。


Translation by Kyoko Kawamae

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