映画で見るカート・コバーン:その生涯を描いた映像作品の数々

『Kurt Cobain: About a Son』 (2006年)


マイケル・アゼラッドの著書『Come as You Are: The Story of Nirvana』は、ニルヴァーナ伝記の決定版とされている。本作『Kurt Cobain: About a Son』は、映画監督のAJ・シュナックがアゼラッドの協力を得て完成させたバンドのドキュメンタリー作品となっている。アゼラッドが行ったコバーンのインタビュー音声(そのテープの長さは合計24時間以上におよぶという)には説得力があるものの、バンド側の協力を得ることができず、ライブ映像なしでの制作を強いられた本作は、ニルヴァーナのファンの支持を集めることはできなかった。その一方で、デス・キャブ・フォー・キューティーズのベン・ギバードが、サブ・ポップとK・レコーズの顔であるスティーヴ・フィスクと組んで手がけた本作のサウンドトラックは、DCFCのファンの注目を集めた。


『パール・ジャム 20』 (2011年)
(原題:"Pearl Jam Twenty"2011)


グランジ、シアトルシーン、そしてパール・ジャムについて語ろうとする時、ニルヴァーナに言及することは避けられない(キャメロン・クロウの『シングルズ』にはニルヴァーナが一切登場しないのだが)。『テン』と『ネヴァーマインド』はそれぞれ1991年の8月と9月にリリースされており、当初は両バンドをライバル同士とする見方が絶えなかった。自身が認めるとおりカート・コバーンはかつてエディー・ヴェダーをこき下ろしていたが、最終的には両バンドがファンを共有していることを悟る。コバーンは後に、ヴェダーを「とてもクール」と語っている。

本作『パール・ジャム 20』に登場する、1992年のMTV ビデオ・ミュージック・アウォードでコバーンとヴェダーが共に踊る姿は、両者の不仲説を完全に消し去った。「世の中には望まずして脚光を浴びる人々がいる。そしてそういう人々は、常に脆さを抱えている」1994年4月8日、コバーンの死を知らされたヴェダーはそう語っている。「カート・コバーンがいなければ、俺たちの誰一人として、今ここに立っていなかったはずだ」

Translation by Masaaki Yoshida

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