MC漢が東京の「闇」に迫るノンフィクションコラム

By MC KAN 2017/01月号 P118〜0 |
ローリングストーン日本版2017年WINTER/連載:DARKSIDE TOKYO(左)漢 a.k.a. GAMIと(右)田代まさし
新宿ストリートを生き抜いてきたラッパー・MC漢が東京の「闇」に迫るノンフィクションコラムをお届けする。

イリーガルに踏み込むのであれば、全て自己責任で終えられなければならないー漢


師走ともなるとさすがに街は冷え込んでくる。 歌舞伎町のストリートに立つ売人達も、モンクレールやノースフェイスではない安いダウンを着込んでオンタイム以外はマンガ喫茶なんかに時化込む時期だろう。 肌寒い時期は街から人が減るものだが、それはアンダーグラウンドの住人にとっては別の意味での寒さを呼び込むことにもなる。

警官と売春婦が追いかけっこするような街で育った俺は、ガキの時分から当然のように裏社会科見学をしてきたものだが、しょうもない野郎達の群れから、誰かが突然いなくなるとしたら大体この時期だった。アルバイトや就職を絶対にしたくないような連中でもやっぱり金はほしいもので、そういった連中がストリートでドラッグディールに走るというのは、世界共通じゃないだろうか。そしてこれはどうしてなのかわからないが、連中の服装や髪型というのは、なぜだか似通っているものなのだ。ある意味溶け込まなければやっていけない新宿という街がそうさせるのかはわからないが、どうにもステレオタイプの"あやしいヤツ"という身なりの人間が多い。職務質問は見た目が九割とは、実際に警察官から聞いた言葉なのだが、実際に当局が使用している職務質問マニュアルは丁寧にイラスト付きで売人のイメージが箇条書きで書いてある。そこに描かれているのは前述した"あやしいヤツ"の身なりそのものな訳だから、路地裏から人気が消えるこの時期は、どうしても目立つのだろう。現に2016年の冬もすでに何人かのラッパーが旅立っている。

つい最近インターネットで薬物事犯検挙人員の推移を見ていた。ここ20年でシンナーと覚せい剤の検挙は大幅に減っている。シンナーに至っては十分の一になっているし覚せい剤も半分になっている。単純に流行っていないのだろう。理由は警察当局のダメ絶対! のPRが効いたというよりも、あくまでも主観だがここらへんの薬物はダサいという認識が広がってきたようにも思う。まったく自慢できることではないのだが、土地柄なのか、ハードドラッグの依存症みたいな知り合いは多いほうだと思う。当然話す機会もある訳だが、彼等から感じるのは、ハマってる連中でも「いいかげんやめなきゃ」、「こんなにシャブ中じゃカッコ悪い」という概念は持っているという事。

以前に田代まさしさんとノリで『リハビリマーシー』という曲を録ってみたことがあるのだが、ダルクで相互監視体制の今だから薬物を断てているのであって、一人でいる時に目の前にブツがあったら、その誘惑に勝てるかは自信がないという趣旨を話していた。
田代さんにもいつまでも薬物依存じゃみっともないし、恥ずかしいという認識があるように、この検挙人員の低下の根底には覚せい剤イコール恥ずかしいというイメージが広がったのではないだろうか。

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