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大統領選翌日のオバマ大統領最後のインタヴュー:トランプの勝利、これからの自分

JANN S. WENNER | 2016/12/24 11:45

| 大統領選から一夜明けて:オバマ大統領の遺したもの、トランプの勝利、これからの自分(Pete Souza/The White House) |


ーでは、我々はどのようにこの国のほころびを縫い合わせればよいと思いますか? 

私が最も重要視しているのは、共通的な事実の積み上げだ。抽象的かもしれないが、つまり我々の生活の中の共通のストーリーをいかにして作るか、ということだ。この分裂状態の中で今最も大きなチャレンジは、国民がそれぞれ全く異なる発信源から情報を得ている、ということで、状況は日に日に悪化している。あちらこちらからかいつまんで要約されたニュース記事からFacebookページまで、ノーベル賞受賞歴のある科学者の語る気候変動問題と、地下室でパンツ一丁になっている若者の投稿とが同じレベルで語られ、賞賛されている。或いはコーク兄弟の発言も然り。人々はお互いに話し合うことを止めてしまった。それぞれが別の星に生きているようだ。インターネット時代の今、出版・報道の自由を尊重し、できれば我々はネット上での検閲はしたくない。それは難しい問題だ。ネット上のメディアの責任をよく認知し、ネットを介したより良い対話を作れるような人間が必要だ。子どものうちから、何が真実で何が真実でないかを見分ける社会教育を行う必要がある。より注目を集め、より興味を惹き、よりエンターテイメント性を高め、より説得力のある方法を見出す進歩主義的活動に興味を持ってくれる人々が必要だ。

ーFacebookの出現によって崩壊したニュース・ビジネスや新聞業界は、出版・報道の自由を維持していくためにも国からの資金的支援が必要ではないでしょうか? 

テクノロジーの進歩がものすごく速く、伝統的なメディアの衰退がそれほど問題とならないこと自体が問題だ。それでもニューヨーク・タイムズ紙は業績好調で、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)も順調だ。NPRは非営利組織だが、聴取者数を伸ばしている。問題はセグメンテーションにある。国の分裂を問題にしてきたが、良いジャーナリズムは今日も生き残っている。ローリングストーン誌も素晴らしい仕事を続けている。問題は、何百何千という情報源からさまざまな世界観を見聞きする現代の状況が、その分裂をさらに加速させていることだ。世間の注目を浴びたいがために、物ごとを大げさに言ってみせたり、議論を煽ったり、誹謗中傷や嘘の話を拡散したりと、人々を駆り立てている。仮にこの状況を抑えることができたとしても、伝統的なメディアへの補助金や支援は容易でない。現実世界でやってきたことをネット上のバーチャルな世界にも適用しようとするのは難しい。何か新たなモデルを見出さねばならない。

ーこの8年の中で個人的に思い出深い出来事は何でしょう? 

ビン・ラディン殺害作戦の成功後、ホワイトハウス周辺に集まった人々からの「USA、USA」コールを聞きながら柱廊を歩いたシーンは有名だ。オバマケアが議会を通過し、若きスタッフとトルーマン・バルコニーに立った時のことも思い出に残っている。私はよくトリーティールームに座って、人々が送ってくれた手紙を読んだ。必要なサポートを受けられていない退役軍人からの訴えの声や、DREAM法による支援を受けた不法移民の子どもが自分の通った学校で教師をしているという話など、とても感動した。


ホワイトハウスに飾られたジョン・F・ケネディの肖像画を見上げるオバマ。「ホワイトハウスへ入った瞬間に自分自身が、この国の独立時の偉大な先人たちから引き継がれてきた伝統や歴史の一部となる。民主政治におけるこの素晴らしい経験は大切にしなければいけない」(Pete Souza/The White House)

まだ片付けねばならない仕事も残っているのでノスタルジーに浸っている暇はないのだが、最も心残りで感傷的にさせられるのは、私をここで支えてくれたチームのことだ。多くの若い世代のスタッフが素晴らしい働きをしてくれた。例えばブライアン・ディーズ。ホワイトハウス外の人はブライアンのことをよく知らないかもしれない。知っていたとしても「彼は確か35歳か37歳の人だったかな」といった程度だと思う。彼は我々の政策担当の副参謀だ。彼が、温室効果ガス削減を目指すパリ協定や航空機業界の協定など、地球を救う取り組みを担当した。ちょうど彼には2人の赤ん坊がいたが、その時期は忙しくて良きパパではいられなかっただろう。政権内には彼のような優秀なスタッフが揃っている。ここでの経験で忘れられないのは、まさに彼らのことだと思う。彼らの働きぶりや、問題や課題に彼らが取り組んでいる姿は思い出に残るだろう。

ーミシェルは将来大統領選に立候補するでしょうか? 

ミシェルは決して立候補しない。彼女は才能あふれた人で、多くの国民から賞賛を受けている。ただ、政治の世界に入るには分別がありすぎる。まあ半分冗談だが。

ートランプへのアドバイスは何かありますか? 

明日(本インタヴューの翌日)、彼と会うことになっているのだが、まず彼に言いたいのは、選挙活動中はどうあれ、「ホワイトハウスへ入った瞬間に自分自身が、この国の独立時の偉大な先人たちから引き継がれてきた伝統や歴史の一部となる。民主政治におけるこの素晴らしい経験は大切にしなければいけない」ということだ。大統領というのは個別の案件を処理しながらも、過去から引き継いだ大切なものを未来へ伝えていくという役割を、何を置いても優先しなければならない。自分の権力、地位、海兵隊楽団のような役得などは二の次だ。少なくとも私は、本当に良いスタッフに恵まれた。影響力のある人々に囲まれ、日々とても勉強になった。取り組むべき問題は遊びではない。たとえそれが得策でなかったり、大衆向けでなかったとしても、全力を尽くして国民のために最適な決定を下さなければならない。そしてここを離れる時になって初めて、「本当に大きな名誉と責任を与えられていた」という満足感を得られるのだ。

ー歴史の重みが彼を少しは落ち着かせるでしょうか? 

このデスクの向こう側に座ると神妙な気持ちになる。どの大統領も感じていたように、彼もその重みを感じるだろう。しかし、大統領にとって最も大きな重みとなるのは、アメリカ国民である。積極的に政治参加する見識の広い一般市民だ。これこそ私がこれから一生かけて自分なりにやっていこうと思っていることだ。



Translation by Smokva Tokyo

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