2016年の人気洋楽アルバム・ベスト10

9位 フランク・オーシャン『ブロンド』
(原題:Frank Ocean, ‘Blonde’)

2012年にシーンを揺るがした『チャンネル・オレンジ』に続く新作が完成間近だという噂は、過去数年間ファンの間で絶え間なく流れていた。R&B界の『チャイニーズ・デモクラシー』と揶揄する声も出る中、本作『ブロンド』は8月20日に満を持してiTunesストアで販売開始された。ビヨンセ、ケンドリック・ラマー、ヤング・リーン、アンドレ3000等との溶け合うようにスムーズなコラボレーションに満ちた本作で、彼は唯一無二の世界観を提示してみせた。本作の発表は間違いなく、2016年の音楽業界最大のイベントのひとつだった。彼のファンが今心待ちにしているもの、それは本作のリリースツアーだ。

8位 ドライヴ・バイ・トラッカーズ『アメリカン・バンド』 
(原題:Drive-By Truckers, ’American Band’)

ドライヴ・バイ・トラッカーズの11作目となる本作のジャケットでは、星条旗が中途半端な高さに掲げられている。それは愛する母国を誇ることができずにいる、パターソン・フッドとバンドのメンバーたちが抱えるフラストレーションを象徴している。『アメリカン・バンド』に収録された11曲で、彼らは後を絶たない銃乱射事件やブラック・ライヴズ・マター・ムーヴメント、難民問題、そして南北戦争までを取り上げている。「ドナルド・トランプの主張に比べたら、(アラバマ州知事の)ジョージ・ウォレスの暴言の数々なんてかわいいもんさ」フッドはローリングストーンズ誌にそう語っている。「『神よ、我々は歴史から一体何を学んだのか?』って言いたくなるよ」

7位 ザ・ローリング・ストーンズ『ブルー&ロンサム』
(原題:The Rolling Stones, ’Blue & Lonesome’)

イギリス生まれのティーンエイジャーたちが結成したザ・ローリング・ストーンズは、アメリカのブルースのコピーバンドとして始まった。彼らはいつの日か、相も変わらずアメリカのブルースに夢中な年寄りの集団として、そのキャリアを終えるのだろう。昨年12月のわずか数日間のうちにレコーディングされた彼らの最新作『ブルー&ロンサム』は、『アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー』、『コミット・ア・クライム』、『アイ・ガッタ・ゴー』等、収録曲すべてがブルースのスタンダードのカヴァーとなっている。「ブルースの魅力ってのはさ」ミック・ジャガーはローリング・ストーン誌にこう語っている。「同じ曲であっても、一度たりとも同じようには響かないっていうところなんだよ。だからこそ、みんなブルースをカヴァーするんだ。エルモア・ジェイムスやマディ・ウォーターズがロバート・ジョンソンをカヴァーしたのも同じ理由さ。彼らがやったから俺たちもってわけじゃなく、ミュージシャンとしてそれにチャレンジせずにはいられなかったってことさ」

Translation by Masaaki Yoshida

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