米国AV業界のセーフセックス問題:物議を醸した"コンドーム法"の内幕に迫る

By Katie Van Syckle
ポルノ俳優を性病感染から守ることに繋がると考えられていたカリフォルニア州のプロポジション60は、同州のAV業界を破壊してしまうのか?(Photo:VGstockstudio)

70年代以降、ロサンゼルス郡に位置するサンフェルナンド・バレーは、10億ドル規模の米国のAV産業のホームとなっている。また、89年のカリフォルニア州の訴訟結果を受けて、州全土でアダルトビデオを撮影することは合法であると考えられてきた。しかし、その法律上のステータスにかかわらず、これまでAV産業が州や連邦の規制の対象となることはほとんどなかった。

しかし2003年に、ポルノ俳優の健康リスクを浮き彫りにする記事をロサンゼルス・タイムズ紙が取り上げると、多くの公衆衛生のコミュニティが、AV業界でのSTDの感染拡大を防ぐために動き始めた。白熱した政治闘争に続き、2012年にはロサンゼルス郡での投票で、アダルトビデオでのコンドームの装着と撮影の登録の義務化が明確に記載された法律、メジャーBが可決された。公衆環境衛生擁護グループであるエイズ・ヘルスケア・ファンデーション(AHF)が後援し、同法律ではロサンゼルス郡にその規則の実施責任が課せられた。

11月にカリフォルニア州で州投票が行われたプロポジション60は、メジャーBを州全体の規制にするというものだ。AHFはこの新たな法律で、プロデューサーが撮影開始時に州のヘルス・ライセンスを取得することを義務化した。また、アダルトビデオのプロデューサーは、出演者がSTD対策として受ける検査、予防接種、健康診断で発生する費用を全額負担することが求められる。そして最も物議を醸していたルールは、カリフォルニア州の住人であれば誰でも、コンドーム未使用の撮影が行われた場合、アダルトビデオのプロデュサー、制作会社、販売会社を相手に訴訟を起こすことができるというものだ。

めったに報道で扱われることはないが、実は米国ではアダルトビデオの撮影におけるコンドームの使用は、すでに義務付けられている。労働環境の安全を監視するカリフォルニア州労働安全衛生庁(Cal/OSHA)は、アダルトビデオの制作において血液由来病原体から出演者を守るために、コンドームの使用が必須であることが92年の法律で定められていると繰り返し主張してきた。しかし、この血液由来病原体に関する法律がこれまでに実施されることは、ほとんどなかった。Cal/OSHAの広報担当者によると、2004年以降で立ち入り検査が実施されたのはたった40回で、コンドーム未使用のために49の召喚状が発行されたという。

つまりプロポジション60は、次善策的な法律だと考えることができるだろう。Cal/OSHAが92年の法律を実施することがほぼなかったために、プロポジション60は、AHFや他の民間団体にコンドーム未使用の撮影を行ったプロデューサー、制作会社、販売会社に対して訴訟を起こすことを認めたのだ。当然のことながら、多くのポルノ俳優がAHFに憤慨し、規制案に対し異議を唱えていた。その一方で支持者は、AV業界には労働者保護のための規則を整備する期間がこれまでに数十年あったとし、プロポジション60が常識的な方策であると主張した。

プロポジション60は、政府が守るべき対象を逆に傷つけることになる例であるとダーリンは考えていた。彼女は労働組合と話し合い、民主党議員に陳情を行い、またカリフォルニア州の共和党といった予想外の支持者から支援を得てきた。ポルノ俳優にとっては、プロポジション60がない方が良いというのが彼女の考えだった。「(AHFは)業界のことをよく知らないのに私たちを守ろうとする団体で、やってることが私たちを大いに脅かすということを全く分かってない」

これに対して、AHFの広報担当であるゲド・ケンスリーは、「ゼロからはじめて、(92年の法律に)従った後に、改正や変更について話しましょう」と言った。
Translation by Miori Aien

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