イギー・ポップの軌跡:未公開写真で綴る高校時代からストゥージズ結成の瞬間まで

プライム・ムーヴァー

Michael Erlewine

イグアナズ解散後、イギーはバンドの最年少メンバーとしてザ・プライム・ムーヴァーズに加入する。写真左のジャック・ドーソンがバンドに加入する前は、ストゥージズのロン・アシュトンがベースを弾いていた。「ザ・プライム・ムーヴァーズのギグでは、スーパーマンのマントを羽織って、天井に張り巡らせたロープをつたってステージに登場したこともあった」ポップはそう語っている。「他にもいろいろやったよ、そういうバンドだったからな」

イギー・ポップとサム・レイ

Barbara Kramer
 
「プライム・ムーヴァーズにいた頃、ある日デトロイトのカフェにマイク・ブルームフィールドとポール・バターフィールドがやってきたんだ」ポップはそう話す。「俺たちは2人にライブを観てもらえることになった。(ブルースドラマーの)サム・レイは2人がやってたバンドを辞めたばかりで、当時はジェームス・コットンと一緒にやってたんだけど、どうしても彼に会いたかった俺は、シカゴに住んでいた彼の住所をブルームフィールドから教えてもらった。ドラムキットを持ってシカゴに飛んだ俺は、いろんな文化が交錯するあの街のウエストサイドにすっかり魅了された。あんなにも美しい場所は初めてだったんだ。ピンクやブルーやイエローが街中にあふれ、ドレッドヘア、アフリカン・カルチャー、最高にクールな人々、いろんなものが渾然としていて、ものすごいバイタリティが街中にみなぎっていたんだよ」

「彼が住んでた赤レンガのアパートを探し当てた俺を、彼が当時一緒に住んでた素敵な女性が迎え入れてくれた」イギーはそう話す。「彼女の名前は忘れたよ。俺がそこを訪れた理由を話すと、サムは不在だと言われた。俺自身はよく覚えてないんだけど、彼の息子によると俺は何日かそこに泊めてもらって、サムの部屋の床で寝てたらしい。彼は当時6歳くらいだったんじゃないかな。すごく親切にしてもらったことを覚えてる。サムと一緒に撮ったこの写真は俺の宝物さ」写真には2人のほか、ポップと共にシカゴを訪れていたシャーロット・ウォルター、バーバラ・クレイマー、ヴィヴィアン・シェヴィッツの3人が写っている。

サイケデリック・ストゥージズ時代にイギーが弾いたギター

「バンド名を考えてた時、俺たちは全員ドラッグのやり過ぎでヘロヘロになってた。(中略)一晩中アシッドをやった後、ロンがこう言ったんだよ。「ストゥージズってのは、俺たちみたいなろくでなしのサイケデリック3人衆にぴったりだ」ポップはそう話す。「それを聞いてピンときたんだよ『俺たちのバンド名はサイケデリック・ストゥージズだ!』ってね」

1967年のハロウィーンに行われたバンドの初ライブで、イギー・ポップはカラフルなハワイアン・ギターを弾いた。「あのショーでスコット・アシュトンは、俺が(バンドがライブを行った家の近くにあった)ゴミ捨て場から拾ってきたドラム缶を叩いてた。レディオ・シャックで売ってた1ドル99セントのコンタクトマイクをくっつけて、パレードのマーチングバンドが使うようなビーターでそいつをぶっ叩いてたんだ」ポップはそう話す。「さすがにハンマーは使わなかったと思う。マーチングバンドのドラマーが使うあのスティックを、俺たちはパレードビーターって呼んでた。普通のドラムスティックよりもずっとでかい音が出るんだよ。それがやつの楽器で、ロンがギブソンのファイヤーバードのベースを弾いて、俺は25ドルのハワイアン・ギターを弾いた。多分ナショナルのやつだったと思う。そんなオンボロが今ロックの殿堂に飾られてるんだから笑えるよ」

Translation by Masaaki Yoshida

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