メタリカ、『ブラック・アルバム』以降の人気ソング・ベスト10

10位『セイント・アンガー』

バンドのドキュメンタリー『サム・カインド・オブ・モンスター』では、困難を極めた2003年作『セイント・アンガー』の制作過程が描かれている。元ベーシストのジェイソン・ニューステッドはレコーディング開始前にバンドを脱退し、アルコール依存が悪化したジェイムズ・ヘットフィールドがリハビリ施設に送られたため、アルバムのレコーディングは延期を余儀なくされた。メンバー間の軋轢はレコーディングは長引かせ、一時はバンドの存続さえも危ぶまれた。アルバム全編に漂う当時の張り詰めたムードは、タイトル曲『セイント・アンガー』の歌詞に如実に反映されている。「全部クソくらえだ 残されたのは後悔だけ」ヘットフィールドはそう叫んでみせる。「この暗闇の中で俺を突き刺す光 / 声を聞かせてくれ / 本当の自分を解放するために」


9位『ザ・デイ・ザット・ネヴァー・カムズ』

難航した『セイント・アンガー』のセッション後、長い充電期間を経てシーンに復帰したメタリカが、『ブラック・アルバム』以降バンドの全作品に携わってきたプロデューサー、ボブ・ロックとのタッグを解消したことはファンを驚かせた。新たにプロデューサーとして迎え入れられたリック・ルービンは、80年代の『メタル・マスター』等に象徴されるスラッシュメタルへの回帰という当初のアイディアを破棄した。ルービンはバンドが過去と向き合いながらも、あくまで2008年に求められるサウンドを摸索するべきだと強調した。そのアルバムからファーストシングルとして公開されたのは、初期の音楽性を思わせる約8分に及ぶ『ザ・デイ・ザット・ネヴァー・カムズ』だった。獰猛なリフに満ちた同曲は、ヨーロッパ各地で開催されたフェスティバルの数々で、5万人規模のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。


8位『キング・ナッシング』

『ブラック・アルバム』が発表された1991年から、『ロード』が届けられる1996年までの5年間に、音楽業界は劇的な変化を経験していた。グランジのムーヴメントは終焉を迎え、チャートがヒップホップに独占される中、グリーン・デイやウィーザーらが台頭するロックのシーンにおいて、メタリカが持つ影響力には多くの人が疑問を抱いていた。またバンドに進化を求めようとしない古くからのファンは、長い髪を切り落としたメンバーの姿や、精液と血にまみれたアルバムカバーに困惑した。アルバムからのラストシングルとなった『キング・ナッシング』で歌われるのは、望むものを手にすることに伴う代償だ。「何もかも音を立てて崩れ去る」ジェイムズ・ヘットフィールドはそう歌う。「王冠を自ら破壊し お前は怒りの矛先に指を向ける / しかしその先には誰もいない」

Translation by Masaaki Yoshida

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