マイケル・ジャクソンの邸宅の秘密:トーマス・ドルビー、浮世離れした邸宅内部の様子を語る

「ただ信じ続けることだよ。ライバルよりも自分が上だと信じ、ほかの誰よりも自分はできるんだって信じ続けるのさ。全体に夢を捨ててはいけないよ」とマイケルは私に言った。

私は彼の言葉にとても感動し、自分の中で勇気がこみ上げて来るのを感じた。ひと晩中、その邸宅の中には我々ふたりしか存在していないように思われた。1時間ほど喋った頃、私にとってはただでさえ初めてづくしだった夜が、さらに奇妙な展開を迎えた。

上の階の踊り場の手すりからいくつもの小さな顔が覗くのが、私の視界の隅にちらりと入った。見上げると、さっと消えた。しばらくするとまた顔が覗く。今度はさっきよりも大人数になっている。きゃっきゃという笑い声が聞こえた。ドアが開き、12人の"サイエンス"が120デシベルの大声を上げながら踊り場へ飛び込んできた。12の小さな顔が私の方をじっと見下ろし、欄干のすき間からこちらを指差している。

木曜の夜は近所の子どもたちを招いておもちゃのラジコンで遊ぶんだと、マイケルが説明してくれた。「さっきの笑いは何だったんでしょう?」と私は尋ねた。彼は笑いながら「君がテレビに出ている人には見えなかったみたいだよ」と教えてくれた。マイケルは子どもたちに手招きして呼び寄せた。すると、手に手におもちゃのトラックやレーシングカーを持った子どもたちがぞろぞろと階段を降りて来た。パジャマや部屋着を着た子どもたちは、私たちの足もとに敷かれたトルコ絨毯の上でトラックや電車を走らせながらはしゃぎ始めた。マイケルは玉座の上から、きかんしゃトーマスのほっそり重役さながらに子どもたちの様子を見守っていた。我々は会話を続けたが、マイケルはたびたび中断して子どもたちを注意していた。「ジミー、それはこっちへ持ってきなさい。ビリー、そんなことしちゃダメでしょ。ええと、僕らのおもちゃの話でしたっけ?」

「僕には子ども時代っていうのがなかったんだ」とマイケルは私に向かって言った。「ずっとツアーに出ていたからね」。それを聞いて私は、彼の父親や兄弟たちが家族の中で最も才能のあるマイケルをねたみ、いじめてからかっていたのではないかと思った。今度はマイケルが私の家族について尋ねてきたので、私は両親に愛されて育った幸せな子ども時代だったと答えた。ただ、私の父が職としていたいわゆる考古学者とはどのようなものなのかを、彼にわかりやすく解説しなければならなかった。

Translation by Smokva Tokyo

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