マイケル・ジャクソンの邸宅の秘密:トーマス・ドルビー、浮世離れした邸宅内部の様子を語る

「いつも頭の中にはメロディや歌詞が浮かんでいるんですか?」と私は聞いてみた。

「毎日何かしら書いているよ。そして踊ってみるんだ」とマイケルは答えた。その時初めて彼の目がはっきりとした茶色であることに気づいた。「その後はビデオゲームだね」。ふたりは同時に笑いあった。

今度はマイケルが私の曲『彼女はサイエンス』で表現したグルーヴについて聞いてきた。「あれはシモンズの電子ドラムかい?僕はあれにハマっていてね。上に1セットあるよ」。

「そうです。あれはSDS5sです。でも私はそれをPPG Waveコンピュータというとてつもない機械と連動させたんです。そのコンピュータは元々タンジェリン・ドリームのライトショーのために開発されたものです」。

「タンジェリン・ドリームは好きです! ロイ・シェイダーが出ている『恐怖の報酬(原題:Sorcerer)』のサウンドトラックは聴いたかい? あれは素晴らしい。僕の映写室に1本あるよ。そういえば、シンクラヴィアも持ってるよ」。彼の言うシンクラヴィアとは12万ドル(約1200万円)もする電子サンプリング・キーボードで、『今夜はビート・イット(原題:Beat It)』のイントロで使われている電子楽器のことである。

このような感じでふたりの会話はとりとめもなく進んだ。音楽制作のテクニックの話から、ニューイングランドのような紅葉がロサンゼルスでは見られずマイケルは寂しく思っていること、故郷を離れて過ごしたふたりの子ども時代のことまで、さまざまなことを話した。私はマイケルの見識や趣味の広さに驚かされた。彼はしっかり地に足が着いた人間で、とても気さくで話しやすかった。そして何より音楽に対する情熱は私と同じくらい持っていた。

その時は『スリラー(原題:’Thriller)』がリリースされて数ヵ月しか経っていなかったが、既に500万枚を売り上げていた。マイケルは私のアルバムの売れ行きについて尋ねた。「悪くはないです。今アメリカのチャートにランクインしたので、地元イングランドの音楽メディアは"イギリスではもっと売れるだろう"と言っています」と具体的なアルバム名などは避けつつ答えた。

Translation by Smokva Tokyo

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