Netflix『ゲットダウン』:バズ・ラーマンが描く、ヒップホップ誕生の知られざる物語

ラーマンとジョージの徹底したリサーチに基づいて制作された本作には、これまで知られていなかったストーリーや史実が数多く描かれている。プエルトリコ系アメリカ人のエゼキエルとラテンアメリカンたちの絆を描くことで、過小評価されがちな後者のヒップホップ史における功績を本作は讃えている。キプリン家が営むサロンの描写は、ブロンクスが荒れ果てたスラム街だったという固定観念を覆すかのようだ。

「燃え盛るビルがサウスブロンクスのイメージになってしまっていることに、僕は我慢ならないんだ」ジョージはそう話す。「まず第一に、多くのビルが燃やされたのはブロンクス中部だ。あと音楽史的にもっと重要な事実は、バンバータが東側で勢力を伸ばしていたのに対し、ハークは西側で台頭してたってことだ。両エリアは人々が思っているよりもずっと離れてるんだよ。だからヒップホップがサウスブロンクスで誕生したっていう説は、ほとんどクリシェのようなものなんだ」

「ある夜、ハークと彼の妹と一緒にフリードマン・ハウスに行ったんだ」ラーマンはそう話す。「彼らは僕が独りになったタイミングでこう言ってきたんだ。『秘密を教えてあげるよ』当時パーティ用のホットドッグやら何やらを作るママ・アンド・ダッドっていう店があったらしいんだけど、そこで働いていた大人たちの多くは子供たちを音楽の道に進ませることで、不良たちから彼らを遠ざけようとしてたらしいんだ。ハークはとあるジャマイカ系の男性から「仕事は大人がやるから、子供たちは遊びなさい」って言われたらしいよ。実際のところは、子供を働かせることが見た目的に良くなかったからかもしれないけどね。とにかく、すごくいい話だと思ったよ」

今作が自身にとって初のテレビシリーズとなったラーマンだが、当初は彼自身は直接関わらないつもりだったという。しかし、制作が進むにつれて考えが変わったとラーマンは話す。

「こういった作品に取り組んだことはなかったからね」彼はこう続ける。「警察もの、コンセプトもの、医療ドラマ、そういうありきたりなジャンルならルールに沿ってやればいい。でも70年代のニューヨークの魅力を描くとなると話は別さ。単なるドキュメンタリーじゃなく、音楽に魅了されたアフリカ系アメリカ人やラテン系のキッズたちの視点で描かれる物語、そんな作品のルールブックは存在しないんだ」

Translation by Masaaki Yoshida

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