24位 『ブレイキング・グラス』(1980年)

スージー・スーとクラウス・ノミの中間のような風貌、そして魅力的な歌声を持つヘイゼル・オコナー演じる若きシンガーは、音楽業界という非情な世界に渦巻く欲望に飲み込まれていく。ブライアン・ギブソンが監督を務めた本作が描く、一文無しの状態からスターダムへと駆け上がるドラマチックな物語は、80年代初頭にはパンクが映画業界にまで目をつけられるほどの巨大産業となっていた事実と、爆発的な成功には転落への恐怖が伴うという冷淡な真実を伝えている。ヘイゼル・オコナーが歌った、『トロン』を思わせる『エイス・デイ』も大きなインパクトを残した。DF


23位『タイムズ・スクエア』(1980年)

ラモーンズの大ファンで若き日のジョーン・ジェットに瓜二つの少女、そして『Fourty Deuce』のようなR指定作品の徹底的な毒抜きに苦心する政治家の娘、この2人が出会うところから物語はは始まる(注釈:後者の父親のような人物が実在するとは、当時は誰も思っていなかったに違いない)。現実にうんざりしていた2人はデッド・ボーイズを思わせるデュオ、スリーズ・シスターズとして活動を始め、ティム・カリー演じるラジオDJがビッグ・アップルのど真ん中でバンドの曲を流した瞬間から、2人の人生は思いがけない方向へと転がり始める。後に『今夜はトーク・ハード』(1990年作)で無数の若者たちを海賊ラジオの虜にする監督のアラン・モイルは、女性によるパンクという当時としては画期的だったコンセプトを本作で打ち出した。トリニ・アルバラードとロビン・ジョンソンがコーラスで放送禁止用語を連発する姿は、後のライオット・ガール・ムーヴメントのバンドを思わせる。本作は知る人ぞ知るカルト・ムービーとして位置づけられているものの、状況が異なっていればハイファッション通の間でゴミ袋を流行させるほどの影響を残すことができたかもしれない。DF


22位『ヴァレー・ガール』(1983年)

本作を『ロミオ&ジュリエット』のティーンムービー版とするのは、いささか強引すぎるに違いない。しかしそういった見方も、キャピュレット家の令嬢をサンフェルナンド・バレーのショッピングモールに入り浸るお嬢様(デボラ・フォアマン)に、モンタギュー家の御曹司をハリウッドに住む繊細なパンクス(ニコラス・ケイジ)に置き換えれば、決して的外れではないように思えてくる。マーサ・クーリッジが監督を務めた本作を、多くの人は単なる大衆向けの甘口パンクムービーと捉えているかもしれない(テレビシリーズの『Quincy』よりは遥かにまともな内容だが)。しかし、権利問題を理由にザ・クラッシュの曲こそ収録できなかったものの、本作のサウンドトラックは無視できない充実した内容となっている。EGP

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