オリンピックの薬物裁判、ドーピング問題の真実

photo by Bloomberg via Getty Images

これは、オリンピックから追放される一歩手前の場所で繰り広げられる物語だ。


あなたがオリンピック選手村の外にあるアッパーミドルクラスのビジネスホテルの会議室にいる以外は、夜間法廷を思い描いて欲しい。そこでは一人のアスリートが不正行為で非難を受け、コーチ、連盟の代表、国際オリンピック委員会(IOC)の職員、数人の弁護士、そして3人の判事がテーブルの周りに集まり、この特定のアスリートが面目を失い、全てのメダルと記録を剥奪され、本国に送還されるべきか否かについて議論を行っている。


スポーツ仲裁裁判所(Court of Arbitration for Sport=CAS)は、選手がオリンピックから追放される一歩手前の場所である。


第31回夏季オリンピックに出場する選手たちは、これまでに無いような厳しい監視下に置かれている。2週間にわたり、リオオリンピック当局は5000人分の尿と血液サンプルを収集する。選手たちは競技場の中であろうと外であろうと、昼夜を問わずいつでも検査の対象となる。各試合の終了後、ドーピングの取締官はメダリストに同行してバスルームに向かい、万が一、人口ペニス(whizzinator)などの任意の装置や隠された薬物反応の無い血液が見つかった場合は、選手たちにズボンを引き下ろし、袖をまくり上げることを要求する。次に、採収したA検体とB検体は、再認定されたリオ市の薬物検査機関に送られる。同機関では、科学者による200~300の禁止物質の検査が行われており、生体パスポートからの偏差は世界のエリート・アスリートたちのために保管される。


しかし、ドーピングはオリンピック選手が大会から追放されることになる多くの状況の中のほんの一面に過ぎない。より注目すべき罪の一例には、装具やユニフォームの改ざん、別人へのなりすまし、年齢詐称、無気力試合(2012年のロンドンオリンピックで行われた、中国、韓国、インドネシアチームのバドミントンの試合のようなもの)なども挙げられる。

Translation by Yuka Ueki

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