イギー・ポップ69歳、ボウイに触発された「最後のアルバム」の内幕

By DAVID FRICKE 2016/08月号 P13〜13 |
Kevin Winter/Getty Images
デヴィッド・ボウイに触発された新作とその内幕とは?

それは、テキサス州オースティンで行われたSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)のライヴ中だった。その時イギー・ポップは、1977年のアルバム『イディオット』に収録された『ファンタイム』をやっていた。上半身の服を脱ぎ捨て、赤茶色に日焼けした胸をむき出しにしていた彼は、ムーディ・シアターのステージから真っ逆さまに飛び降りた。彼を支える観客、その上には十字架に磔にされたような姿で天を仰ぐイギーの姿があった。これは彼が現在開催している(※記事執筆時)ツアー3日目の出来事だ。イギー曰く「これが最後」という、ダークで抵抗し難い魅力を備えたアルバム『ポスト・ポップ・ディプレッション』。4月21日で69歳になったイギーは、本作をひっさげて行っているツアーでダイブした。

「やつらと一体にならなきゃいけなかったんだよ。そのためなら、どんなことだってするさ」。焼けつくような2時間のライヴを終えた後、楽屋でそう語るイギー。ゆっくりとしたバリトンヴォイスが響く。今回のライヴはニューアルバムの他、『イディオット』や同じく1977年リリースの『ラスト・フォー・ライフ』から10数曲がフィーチャーされている。これらは、今は亡き友人のデヴィッド・ボウイと共作し、ベルリンでレコーディングした伝説的なアルバムだ。前の晩、イギーおよび、『ポスト・ポップ〜』のプロデューサーであり、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのギタリストであるジョシュ・ホーミ率いる彼のバンドは、テレビ番組『オースティン・シティ・リミッツ』の収録を行った。しかし、イギーがステージからダイブすることはなかった。「みんな楽しげだったからな。まるでソック・ホップ(50年代に流行った靴を脱いで踊るダンスパーティ)みたいだった」。イギーはクスクス笑う。

しかし今夜は、観客が控えめだったため、「『やつらをペントハウスから追い出さなきゃ』と思った」という。「そりゃ、なかなか難しいってことはわかる。だってカンファレンスに出てるやつもいれば、日がな一日、会議三昧のやつもいるんだ」。一瞬、あざけるような笑みを浮かべるイギー。また彼らは、好むと好まざると「もういっぱいいっぱいになりかけていた」そうだ。

激しいガレージロック、70&80年代の伝説的な自己破壊、苦労して成し遂げたアルコールからの脱却、そしてボウイやグリーン・デイ、現在のホーミに至る彼の崇拝者とのコラボレーション。半世紀を数えようとするキャリアの中で、イギーはまた新たな高みにいる。「俺は他の人間とのほうがうまくやれるタイプなんだ」。イギーは認める。「どうしたって、自分の殻から出てしまわないといけなくなるだろ。それで言うんだ。『お前は俺に挑戦した。だから俺もやってやる』」
Translation by Shinjiro Fujita[RSJ]

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