2016年上半期のベストEDM、エレクトロニック、ダンスアルバムを一挙紹介

エレクトロニック・ミュージックは、昔から私たちの耳に入る前に奇妙で新しい形に変わるときが最も直感的でスリリングで、多くの場合は最もシンプルな要素だけを使用している。ダダイズムに抵抗するマトモスのアルバム『アルティメット・ケアII』の目眩がするようなクラクラしたトラックは、米国の家電メーカー、ワールプール・コーポレーションの洗濯機が発した音を材料としたに過ぎず ─ おそらく、ラリー・ハードの名作『ウォッシング・マシーン』に捧げるためのものだろうか? ─ 一方でケイトリン・オーレリア・スミスのアルバム『イヤーズ』は、幻覚のようなトロピカルな雰囲気を連想させるために、ブクラのアナログ・モノシンセ『ミュージック・イーゼル』を使用した。ティム・ハッカーのアルバム『ラヴ・ストリームス』は、アイスランドの聖歌隊の喉奥に別の世界を見出し、アンディー・ストットのアルバム『トゥー・メニー・ヴォイシズ』は、アリソン・スキッドモアの声だけをガイドに第四世界の不可思議さをより深く探求している。それとは対照的に、オウテカの全5部作からなるアルバム『Elseq』は難解で、精神の錯乱を誘発する4時間におよぶ旅(あるいはデータ)をその配列の全てにおいて彼ら二人の刺激的な音楽を通して放出した。

エレクトロニック・アブストラクションと仰々しいEDMの間に腰掛けるのは、アノーニ(旧名アントニー・ヘガティ)のアルバム『ホープレスネス』だ。悲嘆にくれた宣言を作品の中にしまいこみ、アノーニはドローン戦争や拷問、地球温暖化、政府による監視に関するアルバムを届けるために、ハドソン・モホークとワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの感情に訴えかける作品を利用した。たとえあなたがこの曲に合わせて踊ったとしても、あなたもこの作品の共犯者となる。それは強烈だが、EDMが薬としてのサウンドトラックや逃避するためだけに必要とされるのではなく、抗議のための音楽となりえることを示したのだ。

EDMシーンにセンセーションを巻き起こしたカイゴが、デビューアルバム『クラウド・ナイン』について語る動画はこちら。

Translation by Yuka Ueki

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